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魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

激安なのに磨けば光る“赤い宝石”
鳥取・境港発「ベニズワイガニの逆襲」

池田陽子 [食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]
【第1回】 2014年10月27日
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水揚げ直後のベニズワイガニ。まさに美しい紅色!

 絶大なカニの水揚げ量を誇る鳥取県。なかでも県西部に位置する境港市・境漁港は、ベニズワイガニの水揚げ量が日本一だ。年間約1万トン弱が漁獲され、日本国内におけるシェアは約7割という一大ベニズワイガニ王国なのである。

 しかし、その「生の姿」にお目にかかる機会は少ない。

 ベニズワイガニはその9割が冷凍食品や缶詰、むき身などの加工品として使用される。身入りが少なく、鮮度落ちが早いというのがその理由だ。よって、その姿は市場に出回ることが少ない。そしてベニズワイガニの価格は冬の贅沢な味覚として旅館や料亭、割烹などで楽しまれる「松葉ガ二」と比較すると、半値以下とはるかに「格下扱い」。加工品になるのだから、味もたいしたことはないのだろう……と思われそうだが、とんでもない。実は地元のプロが絶賛する味わいなのだ。

 境港市のカニ専門卸「川口商店」の社長である川口利之さんは「ベニの味わいは絶品!」と太鼓判を押す。地元で「ベニ」とよばれるベニズワイガニ。その「身質は繊細でみずみずしく、松葉ガニより甘みやコクがあるくらいです」と語る。とりわけ甲羅に詰まったカニ味噌は脂肪分が多くて、こってりと濃厚。味噌の入りも多く、その旨みは松葉ガニを超えるという。

 これほどまでに美味しいカニの姿が、なぜ「グラタン」や「コロッケ」に埋もれてしまうのか。それにはさまざまな問題があった。

「かにかご岸壁」は彼岸花が咲き誇る風景

 年間通して豊富な海の幸が揚がる日本海最大の漁港・境漁港。午前5時頃から、ベニズワイガニの水揚げが始まる。

 ベニズワイガニは、「かにかご漁法」で漁獲される。直径約1.5メートル、高さ約80センチの大きなかごに、好物のサバなどの餌を吊るして、1本のロープに50メートル間隔で150個のカニかごを設置し1000メートルほどの海底に約2昼夜沈める。餌のにおいにおびき寄せられたカニが、かごに入ったところで引き揚げる。深海で育ち、殻が繊細でデリケートなカニを生きたまま、傷つけることなく漁獲できるのだ。

 一艘の船は許可されているロープ9連、計1350個のかごを積んで出船する。漁船は隠岐沖などの漁場へ、ほぼ1昼夜かけて向かって漁を行い戻ってくるのは、このかごがおおむねいっぱいになった約1週間後となる。

 かにかご漁船専門の通称“かにかご岸壁”では、帰港した船から続々とベニズワイガニが運び出され、港は一面、真紅に染まる。ベニズワイガニは、ゆでると赤くなるほかのカニと違って、その名のとおり、そもそもが、表も裏も紅色。氷を敷き詰めたケースに入ったベニズワイガニがずらりと並ぶ姿は、まるで「咲き誇る彼岸花」のように美しい。

松葉ガニに負けない旨さのベニズワイガニ

 大量に揚がるベニズワイガニだが「ピンからキリまであるんです」と川口さん。ベニズワイガニは成体になるまで約8年かかり、約10回の脱皮を繰り返す。だいたい甲羅が13センチほどのものが美味しいといわれている。また「黒ずんでいるものは、空気に触れて酸化が進んでいるのでダメ。赤くてきれいに見えても、腹の部分が透き通っているものは、水がたまっていて身の入りが悪いからよくないね」。おおむねA、Bのランクに分けられ、Bランクは、すべて加工品。ただ、Aランクの中でも「生でもいける上モノ」は全体の1割程度だという。

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池田陽子[食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]

宮崎生まれ、大阪育ちのアラフォー。立教大学卒業後、出版社にて女性誌、ムック、機内誌などの編集を手がける。取材を通して、カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは?という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。自身の体調の改善、美容効果などをふまえてふだんの暮らしの中で手軽に取り入れられる薬膳の提案や、漢方の知恵をいかしたアドバイスを、執筆、講習会などを通して行う。また、日本各地の食材を薬膳的観点から紹介する活動も積極的に取り組み、食材の新たな魅力を提案、発信を続け、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。著書に「ゆる薬膳。」(日本文芸社)「缶詰deゆる薬膳。」(宝島社)、「『ゆる薬膳。』はじめたらするっと5kgヤセました!」(青春出版社)などがある。
■HP:www.yuruyakuzen.com
■Facebook:https://www.facebook.com/yoko.ikeda.79

また、鯖をこよなく愛し、日本全国・世界のさば、さば料理、さば缶を楽しみ、さば文化を語り、さばカルチャーを発信し、さばで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動している「全さば連」(全日本さば連合会)にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。
■全さば連HP:http://all38.com
■FACEBOOKページ:http://www.facebook.com/mackerel.cava  

 


魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

和食が世界遺産に認定され、改めて見直される「魚食文化」。日本各地にはさまざまなおいしい魚が水揚げされ、地元ならではの「魚料理」があります。この連載では日本各地の各種魚の産地を訪ね、「とっておきの漁師料理/ご家庭の魚料理/ご当地魚グルメ」を紹介。あわせて漁の様子、市場の風景など、おいしい「浜のめし」を支える人々の活躍をお届けします。

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