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「イスラム国」日本人殺害で
メディアが肝に銘ずべき教訓

――板橋功・公共政策調査会 研究室長

板橋功
2015年2月9日
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人質殺害の報を受け、官邸前で続くデモ。今回の事件は、日本人の心に計り知れない恐怖心を植え付けた
Photo:AFLO

Photo:AFLO日本中を震撼させた、イスラム過激派組織「イスラム国」(略称:ISIS、ISIL、IS)による日本人人質殺害事件。拘束された日本人の映像が公開され、イスラム国の声明が発表される度に、メディアや国民は戦慄し、振り回される日々が続いた。許されざる暴挙を行った彼らの真の目的は、いったい何だったのか。一連の事件の教訓を、どう読み解けばいのか。国際テロリズムに詳しい板橋功・公共政策調査会 研究室長が、詳しく分析する。

日本を翻弄した人質事件の恐怖
語られないイスラム国の真意とは

いたばし・いさお
財団法人公共政策調査会 研究室長。専門はテロリズム問題(国際テロ情勢、テロ対策)、危機管理。1959年生まれ。栃木県出身。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。1987年社会工学研究所入所。1992年財団法人公共政策調査会へ出向。1993年より現職。

 今回のイスラム過激派組織「イスラム国」(略称:ISIS、ISIL、IS、以下イスラム国と記述)による日本人人質事件では、イスラム国が次々に発する声明に日本中が注目し、翻弄された。彼らが発し続けた声明の背景には、どんな思惑があったのだろうか。これまでの経緯を振り返りながら、検証してみよう。

 民間軍事会社を運営する湯川遥菜さんがイスラム国に拘束されたのは去年の8月、湯川さんを救出しようとジャーナリストの後藤健二さんが中東に渡って拘束されたのが10月だった。

 おそらく湯川さんが拘束されてから早い段階で、日本政府とは関係なく、イスラム国と湯川さんの家族との間で、何らかの交渉が行われたはずだ。一方の後藤さんは拘束後の11月初旬、イスラム国の関係者を名乗る人物から、身代金を要求するメールが家族に届いたという。身代金は多額で、10億円とも20億円とも言われ、こちらも両者間でやりとりが続いていたと見られる。

 結局、2人とも妥結しなかったが、拘束されてから早い段階で殺害されたり、解放されたりすることはなかった。2人はイスラム国にとって、お金の要求以外でも使える存在だったのだろう。

 なぜかと言うと、イスラム国のあるエリアには欧米人はたくさんいるが、日本人はとても珍しいからだ。だから日本という国に対するカードとして持っていたほうが有利だと彼らは思い、拘束を続けていたのだろう。

 彼らがそのカードを切ったのが、1月中旬からの安倍首相の中東訪問に合わせてのタイミングだった。日本を揺さぶるのに、最も有効なタイミングだと踏んだのだろう。その後イスラム国からは、2人の処遇に関する声明が、映像(動画・静止画)を伴って、主に五段階に分けて出された。その経緯を改めて振り返ってみよう。

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