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岸博幸の政策ウォッチ

農業とタクシーの規制緩和で試される安倍改革の成否

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第2回】 2015年2月20日
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 安倍首相は国会での施政方針演説で“戦後以来の大改革に踏み出す”と述べましたが、少なくとも経済政策に関しては、演説であげられている取り組みを見ても分かるようにまだそこまでの内容にはなっていません。従って、今年夏に策定する成長戦略で更なる構造改革に取り組むことが不可欠ですが、その試金石となるであろう二つの改革論議が政府内で進んでいます。

企業の農地所有は実現するか

さらなる農業改革は進むか
Photo:hiroshiteshigawara-Fotolia

 一つは更なる農業改革です。施政方針演説ではJA全中の解体が改革の筆頭として挙げられていますが、農業改革の観点からはまだ不十分です。

 農協改革という観点だけからみても、まずJA全農の株式会社化は先送りされました(JA全農は組合員の農家が作る農産物をまとめて販売したり、肥料や農機具などの資材を共同購入しており、肥料で8割、農薬・農業機械で6割のシェアを持つにも拘らず、協同組合であるために独占禁止法が適用されず、税制上も様々な優遇措置が認められている)。

 また、農協の准組合員による事業利用の制限も先送りされました(今や農協は正組合員(農家)よりも准組合員問題(農家以外)の数の方が多く、それが住宅ローン、保険など収益性の高い農協の金融事業を支えている)。

 さらに、農業全体の改革という観点からみると、流通を担う農協の改革ばかりが先行し、肝心の生産の部分の改革が不十分です。農業での生産性の向上のためには農地の大規模化が不可欠なのに、純然たる民間企業が農地を所有することが制限されています。具体的には、農業生産法人を設立すれば農地を所有できますが、要件として、農業関係者が総議決権(資本)の3/4以上を占め、役員の1/4以上が農作業に従事する株主でなければなりません。民間企業で当たり前の所有と経営の分離が行なわれていないのです。

 もちろんJA全中の改革は政治的に抵抗の大きな問題であったことを考えると、それ自体は高く評価すべきであるものの、それだけで終わってしまっては農業を成長産業にするのは難しいのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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