オーストラリア・パースで12歳、9歳の2人の男の子を育てながら、日本での仕事を続けるタレント、エッセイストの小島慶子氏。じつは思春期以降に摂食障害、第2子出産後に不安障害に悩んでいた。
かたや発達につまずきのある子とその家族への指導のために世界各地をかけめぐる国際的セラピストで早くも第4刷が決まった『世界に1つだけの子育ての教科書』著者の奥田健次氏。
ともに自分の親との関係に悩んだ過去を持ち、さまざまな場面で課題を克服してきた。1972年生まれの団塊ジュニア同士。幼少期~今日まで、壮絶な両者の対談から、思い込みから自由になり、課題を克服のための子育て術を初公開する。(構成・橋本淳司)

子どもを動かす“スモールステップの原理”

摂食障害、不安障害を経て2児を育てる小島慶子と<br />世界中から依頼殺到中のセラピスト奥田健次の初対談<br />―母親から「解縛」する子育ての技術―【前篇】小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。 1995年、TBSに入社。アナウンサーとしてテレビ・ラジオに出演。99年に第36回キャラクシー賞DJパーソナリティー賞を受賞。2010年にTBSを退社後、タレント、エッセイストとして活躍。著書には、夫が退職し、オーストラリアに移住したことが書かれた『大黒柱マザー』(双葉社)など多数。新刊『ゼロから始める 小島慶子のきもの修行』(講談社)が3月19日に発売予定。

小島 私、謎が解けたんです!

奥田 えっ!?

小島 奥田さんの『世界に1つだけの子育ての教科書』を読んで謎が解けたんです。

奥田 ええ!? どんな謎が解けたんですか?

小島 夫の努力が報われない謎(笑)。9歳になる次男のことなんですけどね。彼は食が細いうえにご飯中におしゃべりが多いので、すごーく食べるのが遅いんです。
 夫は「もっと早くごはんを食べようね」と繰り返し諭してる。でもやっぱり遅いので、怒ってるんです。いったいどうしたらわかってもらえるんだろうと夫婦で悩んで…。

奥田 諭すのは、町で見かける標語ポスターと一緒。「考えようスマホのマナー」とか「その食べ残しは誰かの一杯です」なんてポスターが目に入っても実際の行動を変える人はいません。

小島 それでたまたま私が思いついた手法が、意外や功を奏したんですよ。で、奥田さんのの中にある「スモールステップの原理」を読んだら、あ、これだ私がやったのは! と(笑)。簡単な約束事を守る課題設定を行う、というあれです。

奥田 ホントですか!

小島 うちの定番のつけ合わせはブロッコリーなんですが、次男は毎度ブロッコリーを眺めながらダラダラしている。で、あるときミッションを与えてみたんです。
「ママがお皿とコップをキッチンに置いてくる30秒間に、このブロッコリーを食べて飲み込んでおくこと。できなかったらデザートはなし!」
 何度か失敗して、好きなアイスを買ってきた日に、ついに次男も必死に。時間内にブロッコリーを食べて飲み込むことができたんです! 「ミッションできるかな」大成功…!

奥田 すごいですね! 小島さんのその方法はプロと同じですよ!

小島 次男も喜んで、「ママ、ミッションやって!」と言うようになったんです。子どもは子どもなりに、食事をきちんと食べられるようになりたい、という気持ちがあったんだなあ、と思いました。

奥田 かつて指導した、ある不登校児の家族支援のことを思い出しました。このときは授業を1時間受けるごとに1枚シールを貼っていって、シールが目標数に到達したらレンタルビデオを借りられるという約束をしました。今までは、学校に行かなくてもレンタルビデオを自由に借りられていたのをやめてもらったんです。
 計画したとおり、不登校から100%出席できる子になりました。こうしたプログラムをまとめた論文は学会で論文賞をいただいたのですが、いちばんうれしかったのは、その子が「ママ、最初から奥田先生のやり方でやってくれたら、もっと早く学校へ行けたのに」
 と言ってくれたことです。

小島 学校へ行くスイッチを入れる技術がなかっただけなんですね。

奥田 そう! まさに技術なんです。本人の“こころ”の弱さじゃない。