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山田厚史の「世界かわら版」

“アベノリスク”に脅える黒田総裁
国債市場に不穏な動き

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第79回】 2015年2月26日
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Photo:G-fotolia.jp

 日銀の黒田総裁と安倍首相の間にすきま風が吹いている。2月12日の経済財政諮問会議で黒田総裁は発言を求め「財政の信任が揺らげば金利急騰のリスクがある」と首相に直言した。金利急騰とは国債暴落のことだ。毎月8-10兆円もの国債を買いまくる日銀の総裁が「暴落リスク」を口にして、首相に財政健全化を訴えた。耳の痛い話は聞きたがらない、といわれる首相はどう受け止めただろうか。既定路線だった消費税増税を先送りしたのは首相である。

 奇妙なことに、諮問会議の議事録には、この緊迫した場面は載っていない。公式には発言は無かったことになっている。政府の中枢でいったい何が起きているのか。

オフレコ発言に日銀総裁の危機感
米ムーディーズの国債格下げが鳴らす警鐘

 経済財政諮問会議は政府側から首相、官房長官、財務相、総務相、経産相、経済財政担当相それに日銀総裁の7人。民間委員として伊藤元重東大教授、榊原定征経団連会長、高橋進日本総研理事長、新浪剛史サントリー社長の4人、計11人で構成される。首相を議長役に財政を軸とする経済政策の指針を議論する。副大臣や事務方の役人が傍聴し、総勢30人余が列席する会合だ。

 参加者などの話によると、黒田総裁は自ら発言を求め、米国の格付け会社ムーディーズによる「日本国債の格下げ」に触れ、日本の財政に市場から懸念が出始めていることを指摘した。

 格下げは「財政赤字の削減目標の達成に不確実性が増した」というのが理由だ。消費税増税の先送りを受けて発表された。平たく言えば、借金を返そうという姿勢が怪しい、ということである。日本国の信用は中国・韓国より低くなった。「この道しかない」と突き進む安倍さんに、市場が放ったカウンターパンチともいえる衝撃だった。

 市場で日本国債はそこまで危ぶまれている、とリスクを語る黒田総裁。首相は「ムーディーズによく説明して理解してもらえばいい」と応じた。

 「説明しても彼らは格下げする時は、こちらの言い分に関係なく格下げする」

 市場は政府の思い通りにならないことを黒田は強調した。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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