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野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

情報を「プル」するためにウェブの新聞を用いる

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第24回】 2008年5月12日
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 新聞を読む目的は、2つある。1つは、世の中で現在何が起きているかを、広い範囲にわたって概観すること。第2は、特定の問題に関しての詳細情報を得ることである。

 この2つは、情報の「プッシュ」と「プル」という概念で区別することができる。新聞を購読している人は誰も、新聞の情報「プッシュ」機能を利用している。これが上の第1のものだ。しかし、情報を「プル」するための手段として新聞を用いている人も多い。これが第2のものである。プッシュとプルの関係については後の回で再び述べることとし、ここでは、後者、つまり情報を「プル」する手段としての新聞について述べることとしよう。

 いうまでもなく、この目的のためには、今日の紙面だけでは不十分だ。過去の記事を参照する必要がある。このために、多くの人が新聞の「切り抜き」作業を行なってきた。

 ところが、これはなかなかうまく機能しない。私の経験で言うと、切り抜いた記事のうち後で実際に参照するのは、1割にもならない。逆に、必要なデータのうち、過去の切り抜きが役に立つ場合は、5%にも満たない。

 もちろん、切り抜きの有用性は単純に「量」だけでは評価できない。「質」が重要な役割を果たしていることは明らかである。しかし、それを考慮に入れたとしても、「プル」目的のために新聞切り抜きがうまく機能しないとは言えるだろう。

 こうなってしまうのは、必要とするデータの性格にもよる。たとえばある産業の動向を追跡することだけが目的であれば、切り抜きは簡単だし、後で役にも立つだろう。しかし、私の場合、多種多様な情報が必要になる。また、問題意識自体が変わってしまうことも多い。したがって、必要となるデータを事前に完全には予測できない。このため、私にとって新聞切り抜きとは、実際にはほとんど役に立たない「気休め」の作業であった。

 個人の切り抜き作業が不完全なものになってしまうのは、私の場合に限ったことではないだろう。実際、新聞の縮刷版が作られているし、データ集や時事用語解説書などが多数出版されている。これは、多くの人にとって、情報「プル」の手段として切り抜きがうまく機能していないことを示している。

ウェブデータが利用できるようになって
切り抜きが変わった

 インターネットで情報が得られるようになって、この間の事情は大きく変わった。検索機能を活用すれば、縮刷版よりはるかに大量の情報を、ウェブから簡単に「プル」することができるからである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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