大石 え、そんなことないんじゃないですか(笑)。少なくとも私は日本酒に対して古いものとか、若い人は飲まないというイメージは全くありません。

 ただ、脚本家としてデビューして間もない頃は、登場人物が飲むお酒の銘柄まで細かく書き込んでいましたけど、最近はそこまで細かく指定していないんです。映像を作る監督の意向もありますし、そもそもお酒のメーカーがドラマのスポンサーに付いていたら他銘柄というわけにいかない、といった制約もありますし。

 とはいえ、おっしゃるように、何を飲んでいるのかはその人のキャラクターに直結する問題ですので、重要ですね。

桜井 今、脚本を手がけられているのは、『セカンド・ラブ』(主演・亀梨和也、ヒロイン・深田恭子、テレビ朝日系列、今年2月6日〜3月20日全7回放映、詳細は最後に!)ですよね。<獺祭>は出てこないと思いますが(笑)、“夜メロ”と銘打たれたラブストーリーの行方が気になります。

大石 まさに今、最終回の脚本を執筆している最中なんです。結末は…どうなるかお楽しみに(笑)。

「初代が創業して2代目で傾き、
3代目が潰す」のセオリーを覆す!?

大石 私からも社長に伺ってみたかったことがあります。薦められて<獺祭>を飲んだ後から、独自の酒造りをしていらっしゃるという話を色々伺ったんです。杜氏さんに任せず社員さんたちのみで、冷房機器を入れて一年中造る四季醸造をされていて、しかも(一般には品評会用の酒造りにしか用いられない)遠心分離器を使っていらっしゃる、といったこととか。

 知るほどに驚きの連続でした。特に、杜氏制度を廃止する、という酒造りの常識を覆すような決断がどうしてできたんですか? 実は親戚に蔵元がいて、日ごろ杜氏さんが通られると手を合わせて拝むほど尊ばれる様子を知っていたので、本当に驚きました。

桜井 杜氏は、神格化されている側面がありますからね。

キラリと光るオトコの“目利き”大石静さんに聞く<br />「美味しいお酒」に通じる“伸びる男”の見極め方「一瞬たじろぎましたけど…ちょうどいい機会だな、と」(桜井さん)
京橋 婆娑羅(東京都中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン1階)にて。 撮影:後藤直義

 でも杜氏に関してはこちらからお役御免としたわけではなく、先方がFA(フリーエージェント)宣言をして、出ていってしまったというのが真相です。一瞬たじろぎましたけど、いや待てよ、ちょうどいい機会だな、と。

 ずっと造り手の若返りを図りたかったですし、私が本当に目指す酒を造れる体制にしたかったからです。日本酒業界においては製販分離が一般的で、蔵元は営業だけやって酒造りは杜氏に任せるのが普通だと思われていた中で、私が杜氏にあれこれ注文をつけるので、杜氏も「シロウトのくせに口出ししやがって……」と内心面白くなかったでしょうしね。