「皆が帰って職場が静かになってから」「まとまった時間が取れたときに」、あとで一気に片付けよう――そう考えて仕事を先延ばしにしてしまう人は多い。しかしそれでは結局うまくいかない。時間管理のコーチが勧める3つの解決策。

 

「次回はもっとうまくやろう」と自分に言い聞かせるが、その時が来たら同じことを同じようにやってしまう。あるいは「後でやる」と決めても、結局やらない。あなたはこうしたことが、頻繁にあるだろうか?

 2つの質問のどちらかに「ある」と答えた方は、ある事実を気に留めていないと思われる。「明日にどう行動するかは、今日どう行動したかでほぼわかる」ということだ。

 こうした癖はあなた1人に限ったことではない。ケリー・マクゴニガルが著書『スタンフォ-ドの自分を変える教室』のなかで紹介したある研究によれば、被験者は健康に関わる選択をした時、「翌週にも機会がある」と告げられると自制心を発揮しにくくなったという(英語論文)。無脂肪ヨーグルトかクッキーを選ばせたところ、翌週にも同じ選択の機会があると聞いた被験者の83%がクッキーを選んだ。しかも、そのうち67%の人が次回はヨーグルトを選ぼうと考えたにもかかわらず、実際にそうしたのはたった36%であった。一方、選ぶ機会は今回限りと聞いた被験者では、クッキーを選んだのは57%であった。

 将来の行動に関する過度の楽観は、運動についても同様のパターンが見られた。ある研究で被験者に、今後の自分の運動量について現実的な予測をするよう求めた。すると、過去の自分の運動パターンに関する厳然たるデータを見せられてもなお、「明日からは変わる」と言う過度に楽観的な人が多かった。

 食習慣と運動習慣については、それでも良しとしよう。だが仕事においても、「後で一気に片付けよう」と先延ばしにする人たちを、時間管理の専門家である私は散々見てきた。残念ながら、将来の時間を当てにして実のある成果につながることはほとんどない。この思考パターンは知らず知らずのうちに、みずからを破滅に導く。いまこの時に仕事を終わらせる機会を逸し、しかも「後で」が来る頃には、罪悪感、疲弊感、不快感でいっぱいになっているからだ。そしてまた先に延ばし、けっして達成されない。

 典型的な行動パターンはこうだ。みんなが帰って職場から人がいなくなってからのほうが集中できると考えて、結局、日中に片付けたのはメールの返信だけ。だが夜に職場で1人になる頃には、疲れて理路整然と考えることができず、何も決着をつけずに帰宅してしまう。短い時間に少しずつプロジェクトを進めるより、今度丸1日かけていっぺんにやろうと考えるが、そんな日は来ない。そして土壇場で慌てる。声のかかった会議にすべて出席してしまい、自分の仕事をする時間がなくなってしまう――。そして、こんなに仕事をしているのにどうしていっこうに落ち着けないのかと、いつも首をかしげている。

 行動を変えるよう意識的に努力しなければ、時間の使い方は明日もまたうまくいかない。生産性を飛躍的に高めるために、次の2つのアプローチを検討するとよい。