ここ2年ほどの間に、円安によって消費者物価が上昇した。他方において、昨年秋からの原油価格下落が物価を下げている。これら2つの逆方向の動きは、実質所得や実質消費にどのような影響を与えているか? 実質所得が増加する条件は何であろうか?

実質所得減少の要因は
消費税増税ではなく円安

 GDP統計における実質雇用者報酬は、2013年1~3月期がピークで、それ以降減少している(図表1参照)。この間、名目報酬は増えているので、減少は物価上昇のためだ。報酬の名目値の上昇に追いつかないほど、消費者物価が上昇したわけだ。

 14年10~12月期の値を13年1~3月期と比べると、名目では2.7%上昇したが、実質では1.3%下落した。

 つまり、デフレーターが4%上昇したわけだ。うち2%は消費税としても、残り2%は円安による消費者物価上昇である(消費者物価上昇率は、後出の図表5を参照)。

物価が下落して、経済の好循環が始まる

 家計調査でも、同様の傾向が見られる。図表2に見られるように、勤労者世帯(二人以上の世帯)の実収入の対前年同月実質増減率は、13年10月からマイナスに転じた。そして14年4月から10月にかけて、マイナス4%台からマイナス6%台の値であった。したがって、消費税増税の影響を除いても、対前年比でマイナスになっているわけだ。

 いずれのデータでも、実質所得の減少は、消費税増税より1年以上も前から始まっていることに注意が必要だ。つまり、実質報酬の減少は、消費税増税によってもたらされたものではない。円安による消費者物価の上昇によってもたらされたものだ。

物価が下落して、経済の好循環が始まる