ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

地元の人も知らない「平塚漁港」はいかに知名度を上げたか

池田陽子 [食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]
【第11回】 2015年3月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
平塚漁港の様子。直売会には多くの市民が押し寄せる

 四季折々1300種類もの多彩な魚が確認され、国内でも有数な海洋生物の宝庫といわれる相模湾。そのほぼ中央に位置する神奈川県平塚市・平塚漁港では、黒潮の流れを受ける豊饒な漁場で育まれた海の幸が水揚げされる。

 平塚の漁業の歴史は古く、16世紀半ばには組織的な漁業がおこなわれ、その港は江戸時代には江戸近郊と相模川流域の物流の拠点として栄えた。現在は、サバ・イワシ・アジなどを対象とした定置網漁業、シラス船曳網漁業を中心に、ヒラメ、イセエビを獲る刺し網などが盛んだ。

 ……と、初めて知った。

 「そうなんですよね……」

 ため息をつくのは、平塚市漁業協同組合の伏黒哲司さん。

 「残念なことに平塚市民ですら、知らない人が多いんです」

 昨今、消費者の魚離れが進んでいるが、平塚でもそれはご多分にもれず。しかも地元で美味しい魚の水揚げがあるにもかかわらず、漁港があることさえ知らないひとが多いのだという。

地元の人から衝撃的な声
「平塚で魚獲れるの?」「港あるの?」

平塚市漁業協同組合の伏黒哲司さん。休日も平塚の魚のPRに奔走する

 じつは伏黒さんは、富山県山間部の出身だ。海とは無縁の環境で育ち、大学進学をきっかけに平塚に住むことになった。大学時代はライフセーバーとして、日々ビーチへ通い、縁あって漁協に就職。この町で結婚して居も構え、たくさんの友達にも恵まれた。いまや「平塚はお世話になった大好きな町」だ。

 その町で、これまで馴染みがなかった魚とも親しみ、その味わいを享受するようになった。しかし他県出身の自分が「美味しく楽しい魚ライフ」を送っているのに、伏黒さんの耳に地元の人々から入ってくるのはこんな言葉の連続だった。

 「平塚で魚が獲れるの?」「港があるの?」「漁協があるの?」

 そんな発言を聞くたび「もっと市民のみなさんに平塚の魚を知って、楽しんでもらいたい」と伏黒さんは思っていた。雨の日も風の日も、夜中1時過ぎには出船し、東の空が白み始めるころ平塚の港に戻って頑張っている漁師のみんなの思いを伝えたい。

 漁協においても、魚価が低迷するなか、その向上は大きな課題だ。少しでも地場の魚の価値を知ってもらい、消費を促進したい。

 「朝獲れた新鮮な魚が、簡単に手に入る環境は当たり前のように思えるけれど、じつはとてもすごいこと。せっかく漁港のある街に住んでいるのだから、獲れたての魚をたくさん食べてもらって地元=『漁港がある街』のイメージが定着してほしい。魚をとおして平塚に住む幸せを知ってもらえたら」(伏黒さん)

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

池田陽子[食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]

宮崎生まれ、大阪育ちのアラフォー。立教大学卒業後、出版社にて女性誌、ムック、機内誌などの編集を手がける。取材を通して、カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは?という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。自身の体調の改善、美容効果などをふまえてふだんの暮らしの中で手軽に取り入れられる薬膳の提案や、漢方の知恵をいかしたアドバイスを、執筆、講習会などを通して行う。また、日本各地の食材を薬膳的観点から紹介する活動も積極的に取り組み、食材の新たな魅力を提案、発信を続け、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。著書に「ゆる薬膳。」(日本文芸社)「缶詰deゆる薬膳。」(宝島社)、「『ゆる薬膳。』はじめたらするっと5kgヤセました!」(青春出版社)などがある。
■HP:www.yuruyakuzen.com
■Facebook:https://www.facebook.com/yoko.ikeda.79

また、鯖をこよなく愛し、日本全国・世界のさば、さば料理、さば缶を楽しみ、さば文化を語り、さばカルチャーを発信し、さばで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動している「全さば連」(全日本さば連合会)にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。
■全さば連HP:http://all38.com
■FACEBOOKページ:http://www.facebook.com/mackerel.cava  

 


魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

和食が世界遺産に認定され、改めて見直される「魚食文化」。日本各地にはさまざまなおいしい魚が水揚げされ、地元ならではの「魚料理」があります。この連載では日本各地の各種魚の産地を訪ね、「とっておきの漁師料理/ご家庭の魚料理/ご当地魚グルメ」を紹介。あわせて漁の様子、市場の風景など、おいしい「浜のめし」を支える人々の活躍をお届けします。

「魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子」

⇒バックナンバー一覧