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持続的成長への挑戦:組織の自己変革力とは何か

ROE経営のような単純な考え方は危険
三菱ケミカルHDの「多変数関数」論

三菱ケミカルホールディングス会長・小林喜光×松江英夫 対談(後編)

松江英夫 [デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授]
【第6回】 2015年4月17日
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構造改革を経て多くの日本企業が過去最高益を記録している。とはいえ、未来に目を向ければ「持続的成長の実現」は依然として大きな課題だ。そして、持続的成長を可能にする鍵は、時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか、すなわち組織の「自己変革力」である。
前回に引き続き、「KAITEKI経営」をコンセプトにサステナビリティ(持続可能性)を強く意識した経営に取り組む三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長にお話を伺った。

グローバルアジェンダを解決することは
最終的には利益につながることを示したい

松江 小林さんの3次元での数量化された経営モデルは非常にユニークですが参考にされた会社があったんでしょうか。

小林喜光(こばやし・よしみつ)
三菱ケミカルホールディングス会長 。1946年山梨県生まれ。71年東京大学相関理化学修士課程修了。ヘブライ大学(イスラエル)物理化学科、ピサ大学(イタリア)化学科留学を経て、74年三菱化成工業(当時)に入社、2005年三菱化学常務執行役員、07年三菱ケミカルホールディングスと三菱化学の社長に就任。15年4月より三菱ケミカルホールディングス会長。理学博士。

小林 こんなことを発想した人がそもそもいないですから参考事例はありませんよ(笑)。私がいろんな人と議論しながら、この10年間考え続けてきたことの集大成です。

 私は基本的にサイエンティストですから、経営をサイエンスとして見ればこうなるはずだと仮説を立てて、会社を使って実験をやっている。だから評論家や学者みたいに訳のわからないこと言うんじゃなくて、実際のデータをベースに議論したい。しかし、これは時間がかかる。一度ここまで動きだせば、もうみんなが自発的にやってくれますけれど。

松江 御社が実践されてきたデータに基づくと、コンセプトの展開に手ごたえを感じておられるわけですね。

小林 そうですね。2011年ごろから今まで3次元での経営管理を積み重ねてきて、MOEとMOSの数値が有意に相関するデータが出てきた。最初は、MOS(Management of Sustainability)でCO2を減らすのは、コストがかかるからMOE(Management of Economics)の儲けに対してネガティブだと思い込んでいた。

 ところが実績を調べると、MOSがいい会社のほうがMOEの営業利益も高い。当然CO2削減はコスト的に少しネガティブな面もあるけど、MOS指標の中には、新商品化率が高いとか、快適な生活に貢献する製品の割合が高いとか、MOEと必ずしも矛盾しないファクターもある。社員の健康だとか、事故を起こさない、コンプライアンスを重視するとかいったMOS指標も含めても、MOSとMOEはだいたい正の相関関係になっています。決してネガティブな相関ではない。

 最初はみんな間違いなくMOS重視はコストアップをもたらしてMOEには負の効果が出るだろうと思っていた。しかしそれは誤解だった。だからグローバルアジェンダを解決することは最終的には企業の利益に直結するという実績を集積して、世の中に示していきたいんです。

松江 興味深いです。私もイメージとしては長期では両立するものの短期的にはタイムラグがあるイメージでした。

小林 そうでもないと思いますよ。特に「コンフォート」の指標では、かなり正の成果が出てくるような気がします。

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松江英夫 [デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授]

デロイト トーマツ コンサルティング パートナー Strategy&Operationsリーダー。中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『自己変革の経営戦略 - 成長を持続させる3つの連鎖』『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。

 


持続的成長への挑戦:組織の自己変革力とは何か

構造改革を経て多くの日本企業が過去最高益を記録するが、未来に目を向ければ、持続的成長を実現する取り組みはまだ始まったばかりだ。持続的成長を可能にする鍵は、時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか、すなわち組織の「自己変革力」である。多数の企業変革に関わってきたデロイト トーマツ コンサルティング パートナーの松江英夫が、経営の最前線で果敢に挑み続ける経営トップとの対談を通じ、持続的成長に向けて日本企業に求められる経営アジェンダと変革の秘訣を解き明かす。

「持続的成長への挑戦:組織の自己変革力とは何か」

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