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福島をわかろうとする行動で、
漠然とした不安を乗り越える
——社会学者・開沼博

開沼 博 [社会学者]
2015年3月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
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東日本大震災から5年目を迎えてもなお、福島は未解決の課題で山積みである。福島には安易に触れてはいけない、「絡みづらい」という思いが、向き合うべき課題から目を背けることにつながってはいないだろうか。震災以前から原発問題を論じ、震災以後、福島の課題と対峙し続けている開沼博が、市民との対話を通して、福島の現状を探る。全3回。

3.11から5年目のいま、福島を語ることの意味

 福島の問題は難しい。科学的な知識をつけないと語れないような気がする。福島の問題は面倒でもある。それを語ろうとすれば、原発や放射線に対する政治的な立場の明言を求められそうな気がする。

 そんな話を何度も聞いてきた。そして、それでも、福島が抱えることを理解したいという想いも感じてきた。

 2015年2月11日、福島市で「ポジティブカフェ」というシンポジウムが行われた。除染や放射線に関して、地元で生活するさまざまな立場の人々が意見を交換し、筆者は、そのファシリテーターを務めた。

 それは、福島県と環境省が共同運営する除染情報プラザが主催し、筆者が所属する福島大学うつくしまふくしま未来支援センターなどが後援する催しだった。「行政がほしがるような答えありきの会、『微妙な話』を避けるような会ではなく、できる限り現地に生きる人の迷いやホンネ、地道に行っている努力を共有する場をつくってほしい」と請われたため、ファシリテーターを引き受けた経緯がある。

 その会では、「いかに不安と向き合い、解消していく手段があるのか」「4年経っても、なお残る課題は何か」などが、具体的な事実・事例をもとに話し合われ、盛況に終わった。

 3.11から5年目を迎えるにあたり、福島県内に限らずに共有する価値を持つ話が多かったことを踏まえて、3回にわたって議論の様子をレポートする。

 第1回は、「はかる」をテーマに、一般社団法人ふくしま連携復興センター事務局長・山崎庸貴さん、特定非営利活動法人ビーンズふくしま・三浦恵美里さん、福島県立福島高校スーパーサイエンス部・齊藤美緑さん、医療法人相馬中央病院内科診療科長・越智小枝さん、筆者によるディスカッションをお伝えする。

***

開沼 本日はお集まりいただき、ありがとうございました。福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの開沼と申します。

 私は、福島に居を構えつつ、講演などで全国各地を転々としながら生活をしています。福島の外に出た時によく聞くのは、「福島の問題は、なかなか絡みづらいんだよね」ということです。

 「絡みづらい」とはどういうことか。

 そこに言及しようとしても言及できない。本当は知っておきたいけれど、なかなか知るきっかけもないし、知ることを躊躇してしまうような状況がある。一言で言えば「いまさら聞けないよね」と、そうおっしゃる方も多いわけです。

 そんな絡みづらさ解きほぐしながら、3.11から5年目、あるいは10年後、30年後に向けた議論をしていければと思います。

 除染や放射線を取り巻く問題について、2つのテーマを設定しました。「はかる」と「食・農」というテーマです。「はかる」から議論を始めていきましょう。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


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