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山田厚史の「世界かわら版」

中国に破れた通貨マフィア
AIIBは日本外交の試練の場に

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第81回】 2015年3月26日
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Photo:Freer-Fotolia.com

 英国はじめEU主要国が参加を表明し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、先進国の協力を得て実現する流れが決まった。日本は「慎重姿勢」を採りつづければ取り残させる。遠からず参加へと方針は転換されるだろう。

 「後からの参加」という外交敗北を反省するしかない。より大きな傷を負ったのは米国。「参加は慎重に」と呼びかけた欧州やアジアの友好国が次々と中国に引き寄せられた。市場として、投資先として、中国を無視できない。そんな現実が国際政治に投影したのである。

 戦後世界の金融秩序は「通貨マフィア」と呼ばれる人脈のネットワークだった。国際通貨基金(IMF)と世界銀行を中心とする国際金融体制は米国とドルを基軸とする経済支配の装置でもあった。だからこそ中国の動きを「国際通貨体制に対する反逆」と見て警戒した。

 中国は途上国を束ねて米国支配にくさびを打ち込んだ。AIIB誕生は大国興亡の歴史的転換点かもしれない。

「爆買い」は欧州でも
世界経済を下支えする中国マネー

 中国人の「爆買い」が話題になるのは日本だけではない。ロンドンでもパリでも中国人の旺盛な消費は、低迷する消費の下支えだ。観光客だけではない。中国とビジネスを拡大することは成長戦略と意識されるようになった。ロンドンでは東京の臨海副都心に当たるテムズ川河口のドックランドをアジアビジネスの拠点にしようと、人民元で商売ができる中華ビジネスセンターが構想されている。

 AIIBへの参加を表明した英国のオズボーン財務相は「欧州で真っ先に創設メンバーになる」と誇らしげに語った。戦国時代の合戦で戦端を切った「一番槍」にご褒美が与えられたように、他国が逡巡している時、真っ先に手を挙げて流れを作った国は厚遇される。

 「英国は中国に恩を売り、引き換えにふさわしいポストを得る約束を取り付けたのだろう」。経済外交の現場で汗をかいた官僚OBは推測する。同じ「参加」でも真っ先に手を上げるのと、後から渋々加わるのでは、外交価値は天と地の違いがあるという。

 フランスもドイツも同様だ。文化を売り物にするフランスは中国の富裕層に狙いを定めている。ブランド品や高級品を惜しみなく買ってくれるのは中国の消費者。ドイツは工業製品を売りたい。日中関係が悪化している間にドイツは中国の市場を席巻した。外国車の首位を独走するのはフォルクスワーゲン。ベンツやBMWも中国市場で潤い、シーメンスは上海を手始めにリニア鉄道を売り込んでいる。膨大なインフラ事業はドイツにとって願ってもない商機である。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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