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森達也 リアル共同幻想論

捏造ではない。本当にあった日本兵の食人行為

森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]
【第85回】 2015年4月10日
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テレビのリモコンを手にしながら嘆息した

 「成功の遺伝子 日本が世界に誇る有名人30人各界スターが最も尊敬した人は?続々発表!」
 「トリハダ(秘)スクープ! 世界を動かした日本人 国境を越えた勇気SP」

 ここに2つ並べたのは、2月16日の月曜の夜に、何気なしにスイッチを入れたテレビがオンエアしていた番組タイトルだ。どちらも3時間のスペシャル番組。前者は日本テレビで7時56分から10時54分まで。そして後者はテレビ朝日で7時から9時54分までの放送だった。

 内容の論評はできない。だってちゃんと見ていない。最初に画面に映ったのは日本テレビで、最近はこの類の番組が多いなあと思いながらリモコンを操作したらテレビ朝日の番組になって、一瞬だけ同じ番組なのかと混乱した。ざっと見た感じでは2つとも、タレントたちがひな壇に座ったスタジオの展開とVTRが交互に進む構成で(つまりとてもオーソドックスなバラエティのスタイルだ)、「世界に誇る日本人」と「世界を動かした日本人」を、刺激的な効果音やスタジオの驚愕の声とともに紹介していた。

 今に始まったことではないけれど、「日本」や「日本人」を強調しながら称揚する書籍やテレビ番組が、このところ急激に増えている。『日本人はいつ日本が好きになったのか』とか『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』とか『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』とか『日本よ世界の真ん中で咲き誇れ』(このタイトルはちょっと怖い。そしてこの本で百田尚樹と対談した人がもうすぐ戦後70年の談話を発表すると思うと、さらに怖い)など、書店では日本や日本人を褒め称える書籍が平積みになっている。

 一時は嫌韓反中のタイトルの本がよく目についたけれど、最近はむしろこの自画自賛傾向のほうが強い。それは知っていたけれど、ゴールデンの同じ時間帯に二つのテレビキー局が日本人自画自賛のスペシャル番組を放送している状況を実際に体験して、このときはリモコンを手にしながら思わず嘆息した。アメリカ人ならばオーマイゴッドとつぶやいていたと思う。でも日本人だから吐息をついただけだ。

 念を押すが、出版やテレビなどのメディアが、勝手に暴走しているわけではもちろんない。需要があるから供給が発生する。多くの人がチョコを求めないのなら、チョコはスーパーやコンビニの棚から消える。多くの人がフライパンを必要としないのなら、フライパンはやがて淘汰されて世界から消える。

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森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]

1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。


森達也 リアル共同幻想論

テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!

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