好きなことを仕事にすると何がいいのだろうか。まず、価値観の合う人や、一緒に働きたいと思える人と出会う可能性が高くなる。仕事で出会う人とは次々友達になる。逆もしかりで、仲のいい友達と仕事を始めることもしやすい。結果、プライベートと仕事の境目がなくなる。これが嫌だという人もいるだろう。でも、好きなことをやっていれば、プライベートと仕事の境がないことは、むしろ幸せに思えるものだ。

 一方で、悪いことは何だろうか。仕事が厳しい展開になってきたとき、あるいは続けるために自分のこだわりと格闘しなければならないときなどは、きっとつらい。好きだからこそ妥協はしたくないから、悩む。好きな仕事なのに、自分が信じるやり方ができないと思える場合は、とってもつらいはずだ。だから、好きなことを仕事としてやっていくなら、「うまくやり続けなければ」いけない。ここには、努力と自信と見極めが必要になってくる。

 好きなことがあって、でもその分野の才能に限界があって、だからすごく悩む、というケースもあると思う。例えば、メンバーの一人がそうだった。建築家になりたい、いい建築や街をつくりたいと思って建築デザインの勉強を始め、でも自分の力に自信が持ちきれなかった。

 そこで、考え方を変えることにした。建築家を諦めても、いい建築や街をつくっていくことは諦めない。諦めないために、諦めることにしたのだ。そして自分ならではのやり方を見つけて、楽しく誇りを持ってやっていくことにしたら、結果的に何も諦めていなかった。

 こんな時代には、「好き」を柔軟にとらえることも大事なんじゃないかと思う。好きなことを仕事にするために、僕らは僕らなりにがんばっているつもりだ。本当に自分が得意なことの幅なんて知れているから、やることは絞らないといけない。そこで人よりも秀いでた何かをつくらないといけない。秀でるためにはすごくエネルギーもいる。

 そもそも一生安心できるポジションなんてない。最大の安心は自分が世の中に価値を生み出せる人間であることだと思う。そのためにはがんばらないといけないし、そのためにやる気のある状態をキープしないときつい。

 そう考えると、自分がやりたいと思ったことをやっていないと気持ちもいつか萎える。どんなことをやっても厳しい局面は必ずある。厳しい状況でも好きだからがんばれる。だから、巡り巡ってやっぱり好きなことをやらないといけないのだ。