読売新聞が報じたところによると、肥満に関する問題の解決に取り組む「日本肥満学会」が、独自に定義する「病気」としての肥満症に対する認識を世界に広め、早期治療につなげる運動を始めた。世界の肥満人口は21億人にも上る。しかし、多くの国では、肥満は病気であるという認識が薄いため、重症化するケースも多いのだという。

 こうした状況を打破するため、国民の認識を改め、肥満症に歯止めをかけようとする国が現れ始めている。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは2013年、体重を2キロ以上減量した人に減量1キロにつき金1グラムを贈るユニークな取り組みが行われた。さらに政府が積極的に肥満対策に乗り出しているのが、シンガポールである。

パーム油や砂糖の過剰摂取に歯止めをかけるべく、国を挙げて取り組む(写真はシンガポールの屋台村「ホーカーセンター」

 シンガポールの保健省が10年に行った国民健康調査(6年ごとに実施)によると国民の18~69歳までの11%が肥満であることが分かった。これは04年に行われた前回調査の7%から4ポイント上昇している。

 シンガポールの健康推進庁(Health Promotion Board)は昨年7月、飲食店など外食産業で利用する油を、パーム油とキャノーラ油の混合油にシフトさせることを目的とした補助金制度を発表した。

 現在主に利用されているのはパーム油。同国の10人に7人が過剰摂取しているとされている。パーム油が心臓病のリスクを高めるにもかかわらず利用されているのは、混合油と比較して価格が20~30%安いからだ。

 同庁は食用油の卸業者に補助金を支給しこの価格差をなくすことで、外食産業における混合油の普及を目指している。20年までに、レストランなどで混合油を利用する店舗を全体の20%に増やす計画を立てている。