第1回で紹介した暦年贈与と並んで王道ともいえるのが生命保険を活用した対策だ。生命保険は基本的には元本を割り込むリスクが少ない上、生命保険によっては直前でも前もってでも時期を選ばず契約できる。そして、非課税枠をフル活用すれば、ほとんどの日本人が相続税に頭を悩ませることはなくなる。意外と知られていない「生命保険の非課税枠の活用」は相続対策の基本中の基本だ。

バブル期の相続対策が残した教訓

 相続税対策で重要なのは、無理をしないことだと私は思います。

 何が「無理」かは、それぞれが抱える事情や考え方によって異なります。資産が目減りするようなリスクは絶対に負いたくない、難しいことや面倒なことはできるだけ避けたい、子どもたちの兄弟仲が悪くなるのは困るなど、相続に対する思いはさまざまです。

相続節税の王道「生命保険の非課税枠の活用」<br />【働き盛り世代の余裕資金を作る法】キャピタル・アセット・プランニング
代表取締役社長
北山雅一

 こういう思いを無視して対策を講じて仮に相続税が安くなったとしても、本人の心の負担は重くなる一方です。

 過去に、無理な相続税対策が横行した時代がありました。バブルの頃の話です。

 その代表が、借金をして不動産投資をするというものでした。相続対策で不動産に投資する最大のメリットは、時価と評価額の差が大きいことです。それに加えて借金をすれば、負債額を相続財産から差し引くことができます。

 借り入れをしてほしい金融機関の熱心なすすめもあり、急激な地価上昇で相続税が払えなくなるのをおそれた土地所有者などが、先を競うようにこの相続税対策をしました。

 しかし、それから間もなくバブルが崩壊。投資用不動産には買い手がつかず、賃貸マンションには空室が目立つようになり、無理な相続対策に走った人たちには、資産価値が大幅に下落した不動産と借金だけが残されたのです。

 今、2020年の東京オリンピックに向けて地価上昇の期待が高まっています。しかし、世帯数はオリンピックを待たずに減少し始める見込みですから、中長期的には不動産需要の減退は避けられないでしょう。

 確かに不動産投資が有効なケースもあります。でも、たとえ相続税で節税しても、それを上回る損失が生じてしまっては元も子もありません。