大いなる野心を胸に抱いた有能な若者の多くが、組織の鈍さに業を煮やしながらいたずらに時間を空回りさせ、やがて型にはまった「組織人」として組織にぶら下がる側に回る。そんな事例を多く見てきた杉江陸氏が、「自分はそうはなりたくない」という意志を持つ若手世代に、キャリア形成のあり方を提言する。
優れたリーダーは
自己否定と進化を続ける
自らの手で道を拓き、大きく世界に羽ばたきたい、と心から願い、先の成長を急ぐ若い皆さんに伝えたい。キャリア選択のカギは「どのようなリーダーのもとで働くか」にある。
新生フィナンシャル
代表取締役社長兼CEO
1971年生まれ。東京大学教養学部卒業、コロンビア大学経営学修士・金融工学修士。メガバンク、外資系戦略コンサルティングを経て、2006年GEコンシューマー・ファイナンス入社。マスター・ブラックベルトとして各種の改革プロジェクトに従事。2012年より現職。GAISHIKEI LEADERS参画メンバーである。
言い古されたことだが、日本企業の多くのリーダーは、そもそも経営者としての教育を受けていない。さらに悪いことに、形式的な慣習から逃れられず、日々の貴重な時間を、部下の完璧な稟議のチェックや御前会議などに費やすことを余儀なくされる。
だが世界に目を向ければ、優れたリーダーは自分自身に相当な金銭的・時間的・体力的投資をしている。自ら人脈を拡げ、他のリーダーからも学ぶ。同僚や部下の長所を取り入れる。専門のコーチに学ぶケースも多い。いわば、日常行動のすべてが学びのプロセスである。
彼ら彼女らがなぜそうした行動を重ねるかといえば、成し遂げたいことがあり、その願望が強烈だからだ。組織活動のすべてに責任を持つ自分自身が、現状に甘んじることなく爆速で進化することが、まだ見ぬ理想の未来の実現のための大前提であると知っているのだ。
私は、優れたリーダーは例外なく「ラーニング・アニマル」であると確信している。
20代、30代の最大の報酬は成長である
組織に属しビジネスに従事することの見返りとして、金銭的報酬、経験やスキルといった成長、やりがいや愛着などを含むリレーションなどが得られる。これらはリーダーとしてより大きな仕事を任されるにつけ、すべてがある程度満たされるようになるが、キャリア形成期にはすべてに充足感を得るのは難しい。それゆえ意図的に選択をする必要があるだろう。
日本企業・外資系企業の双方に属した経験から感じるのは、日本企業ではエリート人財のキャリア選択において、「やりがいや愛着などを含むリレーション」が極度に重視されていることだ。逆に、組織への愛着に強く執着しないエリートは、ともすれば裏切り者と称される。本当にそうだろうか。
潜在能力と意志に恵まれたエリートは、賞味期限が来る前にその潜在能力を最大限に開花させる責任を有すると私は考える。その意味で、若きエリートはリレーションや報酬よりも、成長の機会という「苦しみ」を選ぶべきだろう。リレーションも愛着も報酬も、その場を幸せに過ごすためには大切なものなのだが、求めずともどの道あとからより大きな結果としてついてくるものだ。