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外資系リーダーが日本を変える

“恐竜”になりたがる日本人と
グローバル市場のミスマッチ

伊藤嘉明・ハイアールアジア 代表取締役社長兼CEO

GAISHIKEI LEADERS
【第17回】 2015年3月27日
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グローバルだ多様性だと言いながら、相変わらず日本企業は異端児を嫌う。それゆえ有意義であっても組織に波風を立たせる意見を言わせない力学が働き、組織や前例にパラサイト(寄生)する人材が増殖する。これとは対照に、ハイアールアジアの伊藤嘉明CEOは自ら進んで異端児となり、「叩かれる杭」としてグローバル市場で実績を残している。

世界のどこだろうと「出る杭」は打たれる

伊藤嘉明(いとう・よしあき)
ハイアールアジア 代表取締役社長兼CEO
1969年、タイのバンコク生まれ。米国コンコーディア大学卒業後、オートテクニックタイランドに入社。高級輸入車の企画・販売・営業全般に携わった後、サンダーバード国際経営大学院ビジネススクールMBA取得。日本アーンスト・アンド・ヤング・コンサルティング、日本コカ・コーラ、デル、レノボ、アディダス・ジャパンでバイスプレジデントなどの要職を歴任。2009年からソニー・ピクチャーズエンタテインメントのホームエンタテインメント部門日本代表と北アジア代表を務めた。2014年2月より現職。GAISHIKEI LEADERSのサポートメンバーとしても活躍する。

 日本では出過ぎた真似をする者は叩かれる。ところが、そんな「出る杭は打たれる」といったカルチャーは世界中どこにも存在しない――誰が言ったかは知らないが、こんな「日本の常識」がいつの間にか定着してしまった。

 だがはっきり言おう。それは幻想だ。外資系企業でキャリアを積んだ経験から、断言できる。というのも、かくいう私自身が自ら進んで「出る杭」となり、その結果「打たれ」続けてきたからだ。

 どこの国の会社にいようが、前例のない事業を提案したり、従来とは異なるビジネスアプローチを採ろうとすれば、周囲から叩かれる。「なぜそうするのか」「成功する保障はどこにあるのだ」と厳しく問われる。リスクを取る以上、そんなことは当り前ではないか。非難を浴びることも覚悟の上だ。

 ただし、日系企業と外資系企業との間に違いがないわけではない。大きな違いは、そこで働く個人の胸の内にある。「出る杭」とは、言うなれば異端児であり、前例や定石を覆す存在として周囲から叩かれる。だが、外資系でグローバル市場を相手に戦う個人にとって、異端児といわれることは「恐怖」ではない。「叩かれたらどうしよう」などとは考えることはない。それ以上に自分の信念を貫く抜くほうが価値がある。だから、「叩きたければ叩け」と構えることができる。

 私の場合はこうだ。「前例を覆すようなトライの1つひとつが1本の杭なのだとしたら、何本でも並べてやる」。

 叩いても叩いても減らないくらいの杭を並べれば、叩く側が叩き疲れてあきらめる。日本コカ・コーラからデルへ転職した時、「砂糖水を売っていた人間に、PCの売り方がわかるものか」という視線にさらされたが、次から次へと新しい売り方を考え実践し結果を出した。反論ではなく、行動で、周囲の非難を封じたのだ。

 あるいは、こう考えたこともある。「叩かれた勢いで、逆の側に飛び出てしまうような杭になろう。そうすれば、逆側でまた叩かれるから、結局は元通りになる」と。

 こういう思考で行動を繰り返した結果、面白い現象が私の身に起きた。「だったらやってみろ。その代わり責任は負えよ」。

 こうして、自分の成長やキャリアアップのチャンスにつながったのだ。

 結局のところ多くの日本人は「自分が責任を負う」ことを嫌うのではないだろうか――「叩かれるくらいは耐えられるが、認められ責任を負わされるのは耐えられない」「重責を負うくらいなら、周囲に歩調を合わせて目立たぬほうがマシだ」と。

 そうであれば、問題は打つ側にあるのではない。打たれる側の弱さだ。社会に対する嘆きを示しているように見せかけて、実は自分を責任から回避させるための言い訳として巧妙に浸透させられてきたのが「出る杭は打たれる」の幻想だったのだろう。

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真のグローバル経営を経験してきたビジネス・リーダーが、日本社会・日本企業の多様性の欠如や視野狭窄、長期停滞などの課題に対し新たな視点での解決策を提案し、政治・経済・教育の各分野から日本社会に変革を起こしていくことをゴールとして活動する「GAISHIKEI LEADERS」。そのメンバーが、日本企業にとって最優先課題といえる「経営のグローバル化」について各自の経験と知見に基づき、グローバル規模の仕組みを理解し、日本のユニークな強みをそれと調和させた上で一層輝かせていくための新しい「グローバル経営論」を解説します。

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