Photo by Yasuo Katatae
英蘭石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルが、英液化天然ガス(LNG)大手のBGグループを総額約8兆4000億円で買収する──。その一報が、日本のエネルギー業界の空気を一変させた。「LNGの最大の買い手である日本にとってマイナス」と関係者たちは警戒感をあらわにする。
原子力発電所が全基停止した日本にとってLNGは頼みの綱。電源構成に占めるLNG火力発電の構成比は、震災前の29%から2013年には43%へ激増し、LNG依存度がにわかに高まっている。
そのLNGは米国のシェールガスをはじめ世界中で開発が進み、供給量が潤沢。その上、LNGの輸入価格は原油価格に連動しているため、昨年秋以降の原油価格の急落で、LNG輸入価格も急落。「市場環境は日本にとって良い方向へ流れていた」(橘川武郎・東京理科大学教授)。
ところがBGがシェルに買収されることで、もともと寡占状態だった売り手の競争力がさらに増す。その結果「日本は今以上に良い市場環境は望めなくなる」(野神隆之・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席エコノミスト)。