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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

労働市場の改善ペースが実は鈍化している理由

――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第172回】 2015年5月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
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1~3月期GDP統計:
個人消費の足取りの重さに注目

新規求人数などを見ると、労働市場の改善スピードは世間が思っているほどには高まっていない? 
Photo:taniho-Fotolia.com

 今週5月20日(水)、内閣府は1~3月期のGDP統計(1次速報)を発表する。筆者は同期の実質GDP成長率を前期比+0.3%(同年率+1.4%)と見ている。重要なメッセージとして個人消費の足取りの重さが示されるであろう。背景として、労働市場の改善スピードが思ったほど高まっていないことが挙げられる。

労働市場:
改善スピードが鈍化

 労働市場の改善スピードについては、たとえば、直近3月の新規求人数が一気に80万人まで減り、2013年8月の水準に戻ったことを無視できない(図表1参照)。もちろん、3月のような落ち込みが今後も続くとは考えにくいが、新規求人の増勢は緩やかと言わざるを得ない。

 新規求人数が景気の先行指標であるのに対して、所定外労働時間(残業時間など)は景気の一致指数とされる。この所定外労働時間も増勢を欠いている。

出所:厚生労働省『一般職業紹介状況』、同『毎月勤労統計』よりバークレイズ証券作成
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労働関連指標:
需給バランスではなく
需要そのものも重要

 一般に、日本の労働市場については、アベノミクスの下、明確に改善しているという印象を持つ向きが多いのではないだろうか。その際、しばしば挙げられる材料は失業率の低下や求人倍率(たとえば有効求人倍率)の上昇である。確かにこれらは実現している(図表2参照)。

 ただし、これらは労働力に対する需要ではなく、労働力の需給バランスを反映する。したがって、高齢者の退職(労働市場からの退出)や労働力の世代交代など、構造的な課題が労働供給側に生じている際には、需給バランスの指標だけで景気の強弱を測ることは難しい。

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森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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