ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
遺伝子で拓ける未来の光と影
【第8回】 2015年5月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
大西睦子

出産前の受精卵で遺伝子を自在に操作する
“デザイナーベイビー”をあなたはどう思う?

1
nextpage

生まれる前の赤ちゃんの遺伝子を操作することも技術的には可能になってきました。より知性が高い、あるいは目の色が茶ではなく黒い、といった親の要望に即した子どもを生み出すわけです。しかしそうした科学技術の発展は行きすぎると、優良な子孫のみを残そうとする「優生政策」につながります。技術の進展状況とそれに伴う科学者たちの競争や戸惑いを追いました。

 赤ちゃんの遺伝子を操作することへの賛否について一般に尋ねた、興味深いデータがあります。

 以下は、成人米国人を対象とした米国ピュー研究所の調査結果です。赤ちゃんの遺伝子操作を行う目的として、1)知性のある子どもを作るため、2)深刻な病気のリスクを減らすため、という2つのケースについて賛成か反対か聞きました。

1)知性のある子どもを作るため:賛成15%、反対83%
2)深刻な病気のリスクを減らすため:賛成46%、反対50%

 みなさんはいかが思われるでしょうか? 上記結果を見ると、意外と賛成派が多いように感じられます。

http://www.pewinternet.org/2015/01/29/chapter-3-attitudes-and-beliefs-on-science-and-technology-topics/

 科学技術の進歩によって、こうした議論が盛んになってきています。そこでこの連載最終回では、最近注目のCRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)と呼ばれる遺伝子改変技術について取り上げます。細菌独自の免疫機構を利用したCRISPR-Cas9システムの、Cas9と呼ばれる蛋白がRNAに導かれてDNAを切断する特徴を利用した技術です。

 従来の技術に比べてはるかに迅速に効率よく、遺伝子のDNA配列の好きな場所を改変できるようになりました。すでに、培養細胞やマウスなどの動物モデルを利用した研究において遺伝子改変に成功しており、今後、遺伝性疾患の根本的な原因の治療など、私たち人間への臨床応用が期待されています。

 CRISPR-Cas9システムの研究の第一人者である、カリフォルニア大学バークレー校(University of California,Berkeley)のジェニファー・ドードナ博士のチームが、2012年にサイエンス誌に論文を発表した後、世界中の科学者が植物、動物およびヒトの細胞を用いて、鎌状赤血球貧血およびがんの治療法を研究しています。国立医学図書館によると、2014年のCRISPRに関する論文の数は2年前と比べて4倍以上に増えていました。

 このCRISPR-Cas9の技術の特許には数十億ドル以上の価値があり、発見者のノーベル賞授与は間違いないと言われています。現在、その改変技術の特許をめぐっては、カリフォルニア大学バークレー校とマサチューセッツ工科大学(以下MIT:Massachusetts Institute of Technology)の研究者間の戦いが始まっています。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


大西睦子

内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より2013年12月まで、ハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。


遺伝子で拓ける未来の光と影

ボストン在住の内科医であり、元ハーバード大学研究員である大西睦子氏が、話題の遺伝子研究の最前線をはじめ、遺伝子検査・医療のほか遺伝子食品などがもたらすメリットとデメリットについて紹介していきます。

「遺伝子で拓ける未来の光と影」

⇒バックナンバー一覧