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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

接客スキルが低いのに顧客満足度は高いホテルが実践していたこと

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第26回】 2015年5月27日
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開店時間に店が開かない!
マレーシアのスタバで何が起きたか

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

接客業にスキルが必要なのは言うまでもない。しかし、それ以上に必要な要素がある Photo:naka-Fotolia.com

 筆者は朝、仕事前に近くのスターバックスに寄って、エスプレッソコーヒーを飲むのが日課だ。日本とは違って、ここマレーシアではスターバックスものんびりしていて、開店時間は午前8時だ。筆者はいつも開店直後に寄っていた。

 2週間前、そのスターバックスでは人事異動があって、ショップの責任者であるチーフ店員以下、全員が入れ替わった。

 その直後である。筆者がいつものように8時過ぎに店に行くと電気がついてない。エスプレッソマシンにもまだ布がかけられて、アルバイトと思しき店員はのんびり、座席の整理をしている。他の従業員も思いついたように開店準備を「のんびりと」行っていた。

 筆者が一番乗りだったため、働いている店員に「エスプレッソを頼める?」と尋ねてみると、彼女は「OK、OK」といいながら、マシンのスイッチを入れ、まだ明かりもついていない店内で、のんびりとコーヒーを淹れてくれた。

 筆者は心の中で「誰か気を利かせて電気くらいつけてくれないかな」と思っていた。

 そして、会計をしようとレジでお金を渡すと、彼女は困惑したようにレジをみて、何回かキーを叩いた後こういった。

 「お金はいいです。レジ動かないから」

 筆者の頭は????だらけだった。サービスしてもらったのはあり難かったが、何が起こっているのか全く説明がない。そのうえ、筆者がコーヒーを頼んでいる間に、後ろには長蛇の列ができていた。彼女は彼らに、「ごめんね。レジ動かないから、注文聞けません」とだけ言うと、カウンター裏に引っ込んでしまった。

 残された客は唖然とし、やがてあきらめ顔で去っていった。そこで怒らないのはマレーシア人のいいところだとも思うが、だからこそ、こういう「接客の基本」が育たないのだと筆者は感じた。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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