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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

大阪の問題解決はこれからだ
都構想反対派も責任を持って対案を示すべき

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第107回】 2015年5月28日
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 大阪市を廃止して5つの特別区に分割する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が、5月17日(日)に実施された。結果は、反対70万5585票、賛成69万4844票で、僅差で大阪都構想は否決された。橋下徹大阪市長・維新の党最高顧問は記者会見で、今年12月までの市長の任期満了で政治家を引退することを表明した。また、維新の党の江田憲司代表は「橋下氏を引退に追い込んでしまった」と語り、党代表を辞任する意向を表明した。新代表には、松野頼久幹事長が就任した。

大阪都構想・反対派の主張は説得力があるが
「大阪が抱える問題」には目を背けている

 ダイヤモンド・オンラインでは、藤井聡京都大教授が『「都構想」は大阪の衰退を決定づける“論外の代物”』と題して、合計106人の学者による、大阪都構想反対の論陣を張った。

 「地方分権から逆行している」「大阪市を分割し、権限・財源を大阪府に吸収すれば、大阪市民への生活サービスの低下は避けられない」「財源の使い道を大阪市民が決められない」「縮小された権限と財源の下で、特別区は団体自治も住民自治も発揮することができない」「安全、医療、福祉、生活環境の水準は低下し、公営住宅入居も一層困難になる」「特別区間での財政調整をめぐる争いと、住民間での負担増または歳出減の押し付け合いに終始することとなる」「住民の要求は反映されにくくなり、地域医療が後退する可能性が懸念される」など、さまざまな学問領域からの専門的な反対論の数々は、なるほど傾聴に値する説得力があった(藤井教授のHP)。

 一方で、読んでいて気になることもあった。学者たちの主張は、概して「現状を変えることの問題」を指摘していたが、大阪府・市が抱えているとされるさまざまな問題について、ほとんど言及がなかったことだ。「都構想反対」の自民党大阪府連のHPによれば、大阪市は、約300億円の財源不足で2.9兆円の赤字を抱えているとされる。一方、大阪府も約800億円の財源不足額で5.3兆円の赤字を抱えている(自民党大阪府連)。

 さまざまな「二重行政の弊害」も指摘されている。代表的なものは、大阪府と市が別々に行っている水道事業であろう。府と市はともに琵琶湖から大阪湾に流れ込む淀川に浄水場を置き、大阪府は府内の市町村へ、大阪市では市内に飲み水を供給してきた。その水道事業を府・市で統合すればコストも安く済み、大阪府民に安価な水を供給できるはずだが、未だに手つかずになっている。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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