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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

ドローンで学ぶイノベーションとリスク対策の両立(下)

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第31回】 2015年5月28日
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>>(上)より続く

法律を作って規制するのは
最悪の結果になりかねない

 街中に監視網を張り巡らせ、ドローンを飛ばそうとしている瞬間を押さえ、摘発に至るまでの警察の監視コストは甚大になります。それだけのコストをかけても、世の中の膨大なドローン利用をリアルタイムで網羅的に把握することは困難ですから、違反が発見される確率は極めて低く、違法状態が放置されることになります。

 仮に罰則を科したとしても、我が国の法体系はインサイダー取引等を除くと巨額の罰金は課されないので、一罰百戒で違反を抑止することも難しく、確信犯的な人物が軽犯罪の感覚で再犯し続ける恐れも大いにあります。結局は、ドローンを使う人のモラル次第ということになります。

 遵法精神のない者はルールを破り続ける一方で、遵法精神に富んだ者はルールを守ります。新たに規制法を作っても、結局のところ、悪者はルールを破り続け、正直者と善人だけがドローン利用をやめることになってしまいます。ドローンの悪用はなくならず、ドローンの有効利用だけがなくなってしまうという最悪の結果になってしまいます。「角を矯めて牛を殺す」典型的パターンに陥りかねません。

 とはいえ、悪用に対する対策はしなければなりません。

 まず、3つのアプローチでいう「ルール」ですが、現行法でも十分取り締まれますし、現に、現行法規に基づいて逮捕されています。ドローンを悪用して相手先の業務に支障をきたせば威力業務妨害罪、拙い操縦で墜落させて歩行者に怪我をさせれば過失致傷罪、モノを壊せば器物損壊罪、許可なく敷地に入れば、住居不法侵入罪に問われます。さらに、民法に基づき、不法行為による損害賠償責任は発生します。

 現行のルールで、何か足らないことがあるのでしょうか? もちろん、皆無とは言い切れませんが、大きな法規上の欠陥や欠損があるとは思えません。それを、反射的に、新たな規制が必要だと思ってしまい、それで問題が解決されると思ってしまうのが、思考停止。ルール作りが必要な場合も、国の立法に頼むのではなく、まずは、当事者が速やかに自主ルールを作って対応することが重要です。それでもダメだったときに、国の立法という手順を踏むべきです。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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