自民党内の政策議論の
レベルが低下している

支持団体の意のままに動く自民党議員の危うさなぜ自民党の国会議員の政策議論のレベルが低下してしまったのか

 今国会冒頭での所信表明演説で、安倍首相は“今国会を改革断行国会にする”旨を述べていましたが、現実は完全な掛け声倒れになっています。

 例えば、目玉の農協改革はそれ自体評価できますが、農業改革でもっとも重要な企業の農地保有については何も動きがありません。また、経済全体の生産性向上に不可欠な雇用制度改革については、同一労働同一賃金や解雇規制の緩和といった最重要テーマは検討さえ行なわれず、ホワイトカラーエグゼンプションが実現される程度。しかも、その法案さえ、今国会中に成立させられるか微妙な状況です。

 このように、今や国会は改革断行国会どころか集団的自衛権国会になってしまい、6月末に発表される予定の成長戦略も今まで以上に中身のないものとなりそうです。

 しかし、改革推進のモメンタムの低下以上に危惧すべきは、与党である自民党内での政策議論のレベルの低下です。

 政治家らしい大所高所からの戦略的な視点が欠如しているのみならず、もっともらしい理屈を自分なりに構築することもなく、支持者の業界団体から陳情された内容をそのまま主張しているように見えます。もしかしたら、自民党の国会議員の質がかなり低下しているのではないでしょうか。

酒の安売り規制をめぐり
欠けている真っ当な政策議論

 その典型例が、酒の安売り規制の導入でしょう。既に報道されているように、自民党は議員立法で酒税法などを改正し、主にビール系飲料の過度の安売りを規制しようとしています。国が“公正な取引の基準”を定め、販売業者がそれに従わない場合は販売免許の取り消しもあるという強い規制です。

 この規制強化が議員立法という形で陽の目を見た理由は簡単で、大手スーパーなどの安売りとの競争に晒されて苦境が続く町の酒屋さんの集まりである全国小売酒販組合中央会の陳情/根回しがあったからです。