2014年に東証マザーズへ上場した米製薬ベンチャー、アキュセラ・インクの日本人創設者である窪田良氏が同年末、CEOの座を追われた。15年5月に復帰した窪田氏が、内紛騒動の顛末を語った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)
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それは青天のへきれきだった。2014年12月22日。米国で創業した製薬ベンチャーであるアキュセラ・インクの会長兼最高経営責任者(CEO)である窪田良氏が出社すると、社外取締役らが顔をそろえ、臨時取締役会の開催を告げてきた。
取締役会で彼らは私を褒めちぎりました。「ゼロから会社をつくって資金を調達し、新しい化合物(新薬候補)を発見し、企業パートナーも見つけ、上場もしてみせた。あなたは素晴らしい経営者であり、バイオテクノロジー界のスティーブ・ジョブズ(米アップル共同創設者)だ、ビル・ゲイツ(米マイクロソフト共同創設者)だ」と。それなのに、CEO交代を提案してきた。辞めろという根拠を示さず、ただ褒めるばかりでした。
一人反対票を投じても多数決で勝てない。その場では折れ、全員一致のかたちでCEO職は当時の最高執行責任者(COO)に譲られた。窪田氏は3カ月に1回の取締役会に出るだけのファウンダー(創設者)兼会長となり、日々の経営を主導する立場を追われた。
米国では、社外取締役がCEOの解任と選任を容易に発動します。ベンチャーが成長する過程で経営者が入れ替わっていくのも、よくあることです。でもね、通常は事前に相談があって決めていくもの。
傲慢かもしれませんが、日本の投資家の感覚を理解している、パートナーである製薬会社(大塚製薬)との関係を保ってきた、化合物のことを科学的に誰よりも知り尽くしているという3点において、今のステージで会社の運営は私がやるべきだろうと思っていました。
窪田氏がCEOを解任された背景の一つに、14年に東証マザーズへ上場した同社の株価が下落していたことがあったのかもしれない。