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安保法制と日米ガイドラインは日本の抑止力を高めない(下)

──柳澤協二・国際地政学研究所理事長

2015年6月2日
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日米が一体となって中国を押さえ込む、というのが両国政府のもくろみだが…。写真は2014年の日米印合同演習 Photo:USFJ

>>上編から続く

前回に続き、元防衛官僚で安保政策の専門家である柳澤協二氏に、今国会の焦点である安保法制のポイントと問題点を聞く。柳澤氏は、今回の法制案は内容的にも手続き的にも大きな欠陥があると指摘。さらに、そもそも安倍政権の考え方は日本の抑止力を高める、すなわち日本を守ることにはならず、むしろ危機を招くと説く。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集委員 原 英次郎)

武力行使の基準を
書かないのは欠陥法案

――昨年、集団的自衛権の行使を認めるかどうかの議論がなされたときに、行使が必要な事例として、政府・与党はいわゆる15事例を挙げました。しかし、米軍の船が避難する日本人を運ぶなど、ガイドラインに照らしても現実性のない事例が多いという強い批判も出ました。その最も重要な点については、依然、明らかにならないまま議論が進んでいます。

やなぎさわ・きょうじ
1946年生まれ。東京大学法学部卒業後、防衛庁(現・防衛省)入庁。防衛審議官、運用局長、防衛庁長官官房長、防衛研究所所長などを経て、2004年◯09年、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)。小泉・安倍(第1次)・福田・麻生政権で自衛隊イラク派遣などに関わる。著書に『亡国の安保政策』、『検証 官邸のイラク戦争』、『亡国の集団的自衛権』など。

 そこが今回の安保法制の本丸で、存立危機事態(※)とは何ぞやということですね。その点については昨年7月の閣議決定から9ヵ月も経って、何も具体化されていない。

 これは日本が日本以外で武力行使していく際の基準の話です。国会承認を得るからいいんだと言っても、国会承認は事後承認でもいいんですから、やはりどういう基準で武力行使するのかというところを明確にしないといけない。

 今までの憲法解釈や法律によれば、「我が国に対する武力攻撃があった場合には」という非常に分かりやすい基準があったわけです。今度はそれがないので、どうすれば存立危機になるかということを法律にブレークダウンして書かないと、結局、「政府が勝手に判断していいよ」ということにならざるを得ない。

 その意味では、武力行使を許しておきながら、その基準を書かないというのは、法律として欠陥だと思います。

(※)我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から根底から覆される明白な危険がある事態。集団的自衛権の行使が可能となる、3つの要件の1つ。

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