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田中均の「世界を見る眼」

安倍政権の今後数ヵ月の安保・外交が日本の将来を左右する

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第44回】 2015年5月20日
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日本の外交・安全保障は大きな節目を迎えている。写真は米軍主催の地域内各国訪問活動「パシフィック・パートナーシップ」での様子
Photo:JMSDF

 これから数ヵ月の間に、日本は幾つかの外交安全保障課題について重要な節目を迎える。それら課題に対する政府の判断は、日本の国益に大きくかかわってくるのだと思う。

 国会に提出された安全保障法制関連法案の帰趨、8月15日に想定される戦後70年の安倍首相談話の発出、6月末に設立協定が締結される予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加問題、そして6月22日に基本条約締結50周年を迎える日韓関係である。これらの問題を安倍政権はどう扱っていくのだろうか。国際社会の関心も高い。

集団的自衛権は行使の範囲が課題
ホルムズ海峡の機雷除去は可能か

 第一に、新安保法制法案の国会審議である。自民党・公明党の与党が両院の多数を有しており、法案が成立するのは確実であると思われる。しかし、憲法解釈を変えて新しい法律が制定される訳であるから、数に依存して性急な審議が行われれば、それだけで日本の信頼性を損ねることになる。なぜなら、政府は説明責任を尽くす義務があり、国会審議の過程は近隣諸国に対しても透明性を担保する過程になるからである。

 今回国会に提出された法案の最大の問題は、どのような場合に「集団的自衛権の行使」が認められるのか、ということである。武力行使の新三要件が設けられたが、集団的自衛権が行使される場合のいわゆる「存立危機事態」を、どのような場合に限るのであろうか。

 あくまで紛争解決のための武力行使を禁じた憲法9条の下での集団的自衛権の行使であり、安倍首相が記者会見で述べたように、米国と共にイラク戦争に参戦するようなケースはないことは当然だろう。しかし、以前から肯定的に述べられているケース、すなわち米国が攻撃を受けている状態でホルムズ海峡に敷設された機雷を除去する行動がとれるのか、どうか。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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