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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

居眠りするだけで年収1400万円!
新聞社を食い物にする解説委員の実態

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第17回】 2015年6月2日
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 今回は、ある新聞社の解説委員室で働く女性社員の声を取り上げたい。この女性の話だけで、新聞社全体の人事の在り方を論じることはできないが、1つの参考になりそうなケースだと思った。

 聞くところによると、この新聞社の解説委員らは怠慢極まりないようだが、現在の厳しい企業社会で、そんな働き方がなぜ許されるのか――。その背景を探りたい。そこには、新聞社に限らず多くの日本企業に見られる課題が横たわっていた。


コサックダンスみたいに歩き回るだけ
新聞社の「チロリン村」に住む人々

あなたの会社には、仕事をしない「高給取り社員」がはびこっていないだろうか。そうした社員たちほどエリート意識が強かったりするから、周囲は手に負えない
Photo:km-Fotolia.com

 「あのボケジジイは、ロシアのコサックダンスみたいにフロアを歩き周るんだよね。両腕を組んで、背筋をまっすぐ伸ばして、まっすぐ歩く。10メートルくらい進むとくるっと振り返り、そのままの格好でまた直進する。10メートルほど歩くと振り返り、また歩く。何も言わずに、そんなことを繰り返すんだよ。それで、1400万円もの年収をもらっているんだから……」

 職場の様子を横井さん(55歳/女性)が語る。もともとは新卒時、管理部門の社員として採用され、本社の経理や総務などでキャリアを積んだ。40代後半の頃、この解説委員室の総務に異動となった。総務は、一人しかいない。主に電話番や、事務処理、交通費の清算などをする。

 ここは、ある新聞社の解説委員室。平均年齢50代半ばの解説委員たちが、政治や経済、社会、国際、芸能・スポーツなどについて記事を書いて解説する。

 1990年代始めに解説委員は30人近くいた。その後会社は様々な理由が重なり、経費削減をせざるを得なくなった。現在は15人ほどに減った。解説委員たちはほとんどが本社にいて、全国の支社や支局に勤める20~30代の記者から情報を得て、記事を書く。あたかも自らが取材をしたかのように……。

 解説委員の年収は、少ない者で1000万円ほど、多い者は1700万円近い。この新聞社は職能資格制度に基き、年功的な要素が大きなウェィトを占める人事制度になっている。いったん掴んだ等級(資格)からの降格はない。これは、多くの企業に見られる制度だ。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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