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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

「おれより偏差値が低いあいつらが記者なんて!」
通信社の支局で劣等感の炎を燃やす“嘆きの営業マン”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第39回・最終回】 2014年4月22日
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本連載『悶える職場』も、今回が最終回となる。最終回は、筆者が専門学校で文章指導をしている20代半ばの会社員を取り上げたい。この男性は、大手報道機関で働いている。だが、花形の記者ではなく営業の仕事をしている。彼は記者になりたいと密かに思っているが、壁は高いようだ。

 失意を抱きつつ、会社には籍を置く。そんな悶々とした日々を送るなか、彼の心を支えてくれるのが、過去の栄光である。口癖が、「自分よりも偏差値の低い連中が記者なんて……」。こうした言葉を発することで、何とか自分のプライドを守ろうとしているのだ。

 この男性は、決して奇異な存在ではない。形を変えて、似たタイプの人があなたの職場にもいるはずだ。コンプレックスの裏返しで周囲をバカにする彼のような会社員が陥る「悶え」とは、いったいどんなものなのか。その心は救われることがあるのか。読者諸氏も、一緒に考えてみてほしい。


「もう辞めたい」「東京に戻りたい」
通信社の支局で働く営業マンの劣等感

 「タクシーは来ているのか?……おい! 聞いているだろう?」

 支局長の飯田(43歳)が、店の出入口付近に出てきた。酔っていることもあり、ぶっきらぼうな物言いになっている。

 田口が(25歳)がうつむいたまま、「ええ」と小さく答える。飯田が睨みつけるような表情を見せて、料亭の座敷に戻る。

 その部屋には、大手銀行の支店長や副支店長、総務課長がいた。田口の会社の取引先であり、3時間ほど前からこの3人の接待を彼らはしている。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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