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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

“チェンジ”の時代、イノベーションが
社会のルールも変える!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第13回】 2015年6月8日
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 また、2社にすると、価格の安いほうに多くの量が発注されるため、その2社間で常に価格競争が起きている状態になります。発注側にとっては願ってもない話です。その結果、パーツの価格はどんどん下がり、ますます利益が薄くなっていくというわけです。

 さらに、たとえどんなに努力したとしても、ムーアの法則によるとパーツの価格は2年で半分になるのです。

エコシステムを構築できる
「プラットフォーマー」を目指せ

 今後、日本企業は、パーツ屋から脱却し、アップルやグーグルなどのような「プラットフォーマー」を目指すべきです。

 かくいうアップルも、スティーブ・ジョブズが復帰する前は製品だけを乱発していました。しかし、ジョブスの復帰後は、おそらくマイクロソフトに学んだのだと思いますが、プラットフォーマーを目指すことで高いマージンを上げる企業に成長しています。

 アプリケーションや楽曲、映画などを組み合わせてエコシステムを構築しているiTunesなどが、そのいい例ですね。ちなみに、エコシステムとは、簡単にいえば、複数の企業が協力して利益アップを目指すシステムのこと。いわば、ビジネス界の生態系です。

 このようにソフトウェアの重要性が高まっているのに、いまだ日本企業の多くはメーカー発想にしがみついています。いま大変な状態にあるシャープもまた、パーツに対するこだわりを捨てきれず、8K(現在のフルハイビジョンテレビの16倍緻密に表示する方式)並みの画質を実現する高画質テレビを発売すると発表しています。

 でも、どれだけ立派な器を用意しても、中に入れる映像や音楽などのコンテンツを提供してくれる企業が現れなければ話になりません。そうしてまた、表示デバイスとしての8Kテレビは、ムーアの法則によって2年で価値が半分になる運命をたどるのです。

 ここで改めて、「ムーアの法則」について説明しておきましょう。これは、「半導体の性能は18~24ヵ月で2倍になり、価格は半分になる」というもので、テクノロジー分野の定説となっています。先が見えない社会の中で、未来を正確に言い当てている数少ない法則だともいわれています。

 実際にこの50年間、この法則は正しかったといえますし、今後もおそらくそうでしょう。それなのに消耗戦に乗り込んでいくのは、古いルールの踏襲を優先し、新しいアイデアに目を向けることができない人ではないでしょうか。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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