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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

キャリアに一貫性がないと転職に不利、という俗説を疑う

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第21回】 2015年6月8日
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転職市場では一般的に職歴に「一貫性のある人」の方が評価されやすいというが…
Photo:Paylessimages-Fotolia.com

 ある企業の営業課長の求人に、人材バンクから2人の候補者が推薦されてきた。Aさんは、同じ業界で長く営業を担当してきた「キャリアに一貫性がある人」。いっぽうBさんは、有名企業の出身だが、複数の業界を経験し、職種も営業、人事またあるときは企画と、完全なる「キャリアに一貫性のない人」だ。

 この2人を比べると、ほとんどの採用担当者は「キャリアに一貫性があるから、Aさんがいい」と言うだろう。そのため、人材バンクも「キャリアに一貫性がある人」が登録してくれるのを望んでいる。経歴がわかりやすく、企業に売りやすいからだ。今回もBさんは当て馬で、本命はAさんである。

 そして、人材バンクはメディアやいろいろな場面で、キャリアの一貫性の必要性を力説し、多くのビジネスマンも、「一貫性のあるキャリアを積まなければならない」と思うようになった。ちなみに、ここで言うキャリアの一貫性とは、同業種内での仕事または、同職種の仕事を意味する。

 しかし、みなさんにも一度考えていただきたい。果たして、同業種や同職種の枠内に居続けることに、それほど大きな意味があるのだろうか。

 もちろん、同じ業界で働き続けていれば、人脈も豊富になるだろうし、即戦力として仕事はできるだろう。長年、同じ職種を続けることで、「広報のスペシャリスト」「人事のプロ」になることもできる。長く続けた者にしか持てない「勘」(洞察力)を持つ人もいる。これらのことは、正しく評価されるべきであろう。

 いっぽう、業種を越え、職種を越える人は、異なる場所で異なる機能をこなす多様性対応(ポリバレント)力が高いことが想像される。しかし、それは評価されることはない。社内ではローテーションと称していくつもの職種を経験させるから、多様性対応力が必要ないと考えているわけではないのだろうが、それは教育研修のコストとして割り切っているのだろう。結果を出すことを求める中途採用者には、多様性は求めないようである。

 この会社でも結局、営業課長のポストはAさんのものになった。会ってみるとBさんのほうがはるかにスマートで人当りも良く、基礎的な能力は高いうえに、会社との相性も良さそうだった。Bさんに入社してもらったら、これまで無かった新しい営業部隊が生まれるのではないか、と営業部長や採用担当者は思ったそうだ。しかし、人事部長が、「こういう一貫性の無い奴はすぐに辞める」と聞き入れず、無難な線で落ち着いた。幸いAさんは着実に成果を出し、採用は成功したのだが、営業部長や採用担当者は、Bさんに来てもらったら、もっと面白い結果になったのではないかと今でも思っているそうだ。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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