『週刊ダイヤモンド』6月13日号の特集は「ゼネコン 気がつけば最高益の罠」。その中から、ゼネコン業界が注目していたリニア中央新幹線の品川駅建設工事入札に関するスクープをご紹介します。

「入札は不調だった。先方の予定価格に合わなかったということだ」(大手ゼネコン関係者)――。

 総工費5兆5235億円。東海旅客鉄道(JR東海)が威信をかけて取り組む超弩級プロジェクト、リニア中央新幹線計画。

 その第1弾、東京側のターミナル駅となるリニア品川駅の建設工事の入札がこのほど行われた。スーパーゼネコンを含む複数社が応札したもようだが、結果は関係者の言葉どおり、不調となった。JR東海の予定価格よりも、札を入れた全社の提示した価格が上回ったというわけだ。

 リニアといえば、本体着工は2015年度で、品川〜名古屋間を結ぶ路線が完成するのは27年の予定だ。45年に大阪まで延伸すれば、合計9兆円という莫大な金額に膨れ上がる。

 スーパーゼネコンはもちろんのこと、土木工事に自信のある準大手に至るまで、色めき立ち、工事に飛び付くものと思われたが、さにあらず。

 JR東海は費用を全額自社で賄う方針を示しているが、折からの建設コストの上昇に予断を許さない今、いくら歴史的な大工事であっても、採算を無視した価格で応札する余裕はゼネコンにはない。

 というのも、ゼネコン各社は、ようやく業績回復の途上にあり、長年苦しんできた“不採算受注”のくびきから、脱却し始めたところだからだ。

 何より、リニアにかかわる土木工事は困難を極める。

 なぜなら、工事区間の86%がトンネル工事であり、その多くは、地下40㍍という大深度地下を掘り進めなければならないからだ。最難関は、最大土かぶりが1000㍍以上ある区間を含む、南アルプスを貫く全長25㌔㍍に及ぶ長大なトンネル工事だ。

 もっとも、新たに建設するリニアの品川駅とて、簡単な工事ではない。JR東海が国に提出した環境影響評価書によれば、リニアの品川駅は、現在の東海道新幹線品川駅の地下にできることになっている。地表からの深さは約40㍍で、幅は最大で約60㍍、長さは約900㍍にも及ぶ広大なもの。

 しかも、工事をする際には、地上を走る新幹線や在来線の運行に支障をきたすわけにはいかない上、駅の東側は開発が進んでおり、工事スペースは限られている。それ故、「上位10社のゼネコンでなければ対応できないほどの難工事」(ゼネコン業界関係者)だという。

 さらに今後は、先述した南アルプスを貫く長大なトンネル工事の入札を控えている。

 ゼネコン各社は地質調査の技術開発でもしのぎを削っているが、「一般的にトンネル工事では、作業を始めてみないと地質の本当の状態はわからない」(複数のゼネコン業界関係者)。つまり、ただでさえ難工事な上、地質によっては、想定を上回るコストが掛かる可能性は否定できない。

全国1032社、生き残るのはどこだ

『週刊ダイヤモンド』6月13日号の巻頭特集は、「ゼネコン 気がつけば最高益の罠」です。

 バブル崩壊以降、ゼネコン業界は長らく続いた“冬の時代”を耐え忍んできました.が、ここにきて東京五輪や大規模再開発、東日本大震災の復興事業など建設需要の高まりを受けて業績は急速に改善、2014年度決算は、近年まれにみる増収増益のオンパレードとなっています。

 とりわけスーパーゼネコン各社の業績は絶好調で、大成建設は過去最高利益をたたき出しています。ところが、業界の盟主、鹿島については単体赤字に陥り、独り負けを喫しています。過去に受注した海外の大型工事の損失がいまだ尾を引いていることがその理由で、これまで資産の切り売りで決算の“お化粧”をしてきたのが実態です。6月に押味至一氏が社長に就任しますが、今後のかじ取りに注目が集まっています。

 また、関西が発祥ながら、東京に軸足を移しつつある大林組が狙うある物件がひそかに話題になっていたり、建築部門で他のスーパーを引き離す利益率を上げる清水建設の宮本洋一社長のインタビューも必見です。

 次に、準大手・中堅ゼネコンですが、こちらも好調な決算が続出しています。そこで今回は、「入札の札が減るだけ」との理由から合併に否定的なゼネコン業界にあって、成功例とされる安藤ハザマやナカノフドー建設、逆転の発想でM&Aを仕掛けまくる高松コンストラクショングループなどの“今”を重点的に取り上げています。また、スーパーゼネコンであっても、海外事業で損失を出すことが少なくない中、海外で着実に実績を上げているマリコン大手の五洋建設や西松建設を取り上げ、海外事業の成功の鍵についても詳述しました。

 そして、建築時には不可欠ながらも、ほとんど表に出ることがなかった設計事務所。実は、ゼネコンとは協業の関係にありながら、水面下では仕事の取り合いが行われています。その内幕に迫りました。

 また、恒例の地方レポートは、公共工事の先細り懸念が高まる北海道に始まり、震災復興工事に不安が募る東北、地場ゼネコンながらスーパーを目指すトーケンが気を吐く北陸、中堅ゼネコンがひしめく大阪、V字回復を遂げた松尾建設が君臨する福岡を取り上げています。

 最後に、全国1032社のゼネコンを都道府県別に分けて作成した“生き残り力”ランキングです。売上高、収益力、安全性、公共工事受注力の四つの指標を組み合わせて全国のゼネコンの実力を図っています。

 あたかも最高益に沸くかに見えるゼネコン業界ですが、実は、足元では公共工事がピークアウトする兆候が垣間見えており、東京五輪が開催される2020年以降は大型工事が減っていく見込みであるなど、また数年後には厳しい状況が訪れる可能性が高まっています。その点についても、各種指標をつぶさに見ることで分析しています。ぜひ、ご一読ください。

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2015年6月13日号「ゼネコン 気がつけば最高益の罠」

◆Part1 絶好調の先に迫る”宴の後”
◆Part2 最新決算分析 スーパー5社の明暗
◆Part3 準大手・中堅 合従連衡の今
◆Part4 知られざる設計の世界

◆Part5 全国「縦断」地域レポート
◆Part6 全国1032社”生き残り力”ランキング

 

 

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