ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
週刊・上杉隆

北朝鮮に足元見られ核開発を黙認するブッシュ末期政権の大愚

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]
【第35回】 2008年7月3日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 見事な「政治ショー」だった。

 核査察を求める国際的な圧力の声が高まる中、北朝鮮は核計画の申告書を中国政府に提出した。寧辺の核施設の冷却塔を爆破したのは、その直後のことだった。

 今回、平壌政府は爆破にあたって、各国のメディアを現地に招待し、その様子を公開した。その狙い通り、テレビニュースでは繰り返し爆破の映像が流れ、翌日の新聞紙面にも崩れ落ちる冷却塔の写真が掲載された。

 実は、すでに爆破前、その冷却塔は役割を終え、内部設備は撤去されていたのだ。廃墟と化したコンクリートの建物の破壊は、単なる「爆破ショー」である以外の意味はない。

 だが、世界中のテレビで強烈な映像が流れたおかげで、問題はすっかりすり替えられてしまった。果たして、その冷却塔が使用可能であったどうかを検証する声は、圧倒的な映像の前にかき消された。

 申告書の中身がどうであれ、世界中に「爆破ショー」が伝えられたことで、金正日政権の目的はほとんど達せられたといっていいだろう。

 G8外相会合のため、日本を訪れていたライス米国務長官は、高村正彦外務大臣に対して、申告書の検証を約束した。だがいったい、それにどの程度の意味があるというのだろうか。

「爆破ショー」でまんまと
世界を欺いた北朝鮮

 したたかな戦略でもって、各国の報道機関のみならず、全世界の人々を騙してしまった北朝鮮。今回の「爆破ショー」は、金正日政権のメディア戦略の勝利以外の何ものでもない。

 過去、独裁国家には度々メディアの天才が登場している。北朝鮮政府の中にも、ナチス時代のドイツがそうであったように、プロパガンダで国民を操る頭脳を持った人物が存在しているのだろうか。

 北朝鮮の「ゲッベルス」の正体は未だ知られていないが、今回の「爆破ショー」を見る限り、日本を初めとする先進国の「敵」ははっきりしたといえる。すなわち、そうした人物の戦略と戦うことである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く

「お腹の調子が悪い」と政権を投げ出した安倍首相。「あなたとは違うんです」と逆ギレして職を辞した福田首相。そして漢字と空気が読めず政権崩壊寸前の麻生首相。この国の政治の混迷とメディアの体たらくを上杉隆が斬る。1500円(税込)

話題の記事

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


週刊・上杉隆

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。
2011年12月終了、後継新連載「週刊 上杉隆」はこちら

「週刊・上杉隆」

⇒バックナンバー一覧