実務家には、どれが正しいかの議論は不要

 ハーバード・ビジネス・レビューなどの雑誌を見ていると、4つの学派がお互いを批判しあうことがあります。

 しかし、実務家としては、4つのどれかを選ぶというよりも、4つの視点から総合的に自社や自部門を見つめ、高いレベルでのバランスで戦略を考えていくべきでしょう。

 たとえばマイケル・ポーターは、ポジショニングアプローチの代表的な経営学者として知られています。

 これは、おおよそ正しいのですが、だからといってポーターは「外側」のことばかり考えているわけではありません。

 魅力的な業界でユニークなポジションを獲得せよと述べる一方で、バリューチェーン(価値連鎖)の独自性・適合性も重視しています。ちなみに、バリューチェーンを一言で言うと、企業内部のさまざまな活動を相互に結び付けて価値を生み出すことです。

 つまり、企業の「内側」の諸活動の適合性と顧客価値との関係にも注目しているのです。

(1)ポジショニングアプローチ

 上記の図の左上、自社の外側に注目し、戦う市場を定め、そこでの成功要因を考えるのがポジショニングアプローチの考え方です。

 ポジショニングアプローチの代表例が、マイケル・ポーターのフレームワークです。

 業界を広く見渡して細分化し、細分化された業界を以下の5つの競争要因で分析します。

経営学には「4つ」の種類がある(前篇)

 この5つの競争要因分析で魅力的なセグメントが見つかったら、そこで他社と違う独自のポジションを確立して、持続的に競争優位を築き、高収益を挙げるという戦略です。

 どの業界で事業をするか、また、そこでどういう戦略をとるかによって企業の業績は変わってきます。

 昔から「繊維不況」「造船不況」「ITバブル」など、業界全体が不況になったり好況に沸いたりしてきました。

 ポジショニングアプローチは、環境決定論的であるという批判がありますが、業界の構造が決まれば収益率が決まってしまうのかというと、そうではありません。