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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

「ライブドア株主賠償」95億円判決
“株の損害”をどう立証するか?

――分かれ目は、「事実公表日」と「他の下落要因」

永沢 徹 [弁護士]
【第34回】 2008年6月20日
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 2006年1月に起きたライブドアの粉飾決算事件。事件後、ライブドア(現ライブドアホールディングス)に対して、損害賠償を求めるいくつかの株主の集団訴訟が起こされている。その中の1つ、ライブドアの株主であった日本生命および信託銀行5行(以下、原告株主)が起こした訴訟において、先週の金曜日(6月13日)、東京地裁で判決が下された。

 今回の原告株主は、粉飾決算による株価下落・上場廃止により、持ち株に大幅な損害が発生したとして、総額108億8100万円の賠償を求めていた。そして今回の判決では、「粉飾決算が投資判断に重要な影響を与えた」とされ、請求額のうち95億4500万円の賠償金が認められた。

 「株主代表訴訟」と一部混同されているものもあるが、「代表訴訟」というのは、会社に損害を与えた役員に対して、株主が会社を代表して役員に対して会社に対する賠償を求めるというものである。しかし今回の株主訴訟は、代表訴訟とはまったく異なるものである。これは、会社または役員の瑕疵により株価が下がり、株主自身が損害を被ったとして、株主が直接会社もしくは役員を訴えるという損害賠償請求である。

立証困難な“株の損害”
に新たな道筋

 この『株主損害賠償訴訟』だが、言ってみれば「自分の持っている株が値下がりしたから、その分を弁償しろ」ということになる。しかし、“株の損害”については「投資は基本的に自己責任」という側面もあり、裁判ではなかなかそれが認められにくい。しかし、会社に粉飾決算などの不正行為があった場合には話は別であり、まさに今回のライブドア事件においては、それが認められたことになる。

 しかしながら、株の損害を認めるにあたっては難しい問題がある。それは「損害額」の算出である。上場されている株であれば日常的に売買取引がされており、さまざまな要因で株価は上下するもの。「どういう場合に損害が認められるのか」、それを立証することは非常に難しいとこれまでいわれてきた。

 だが4年前に改正された証券取引法(現在の金融商品取引法=金商法)により、その道筋は変わり始めた。同法第21条の2第2項において、

 「(有価証券報告書等の)書類に虚偽記載等の事実が公表されたときは、当該虚偽記載等の事実が公表された日前1年以内に当該有価証券等を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券等を所有する者は、当該公表前一月間の当該有価証券等の市場価額の平均額から当該公表後一月間の当該有価証券等の市場価額の額を控除した額を当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができる。」

という新たな規定が設けられたのである。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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