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山田厚史の「世界かわら版」

TPPにヒラリー氏さえ慎重論、米国議会の紛糾は他人事ではない

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第87回】 2015年6月18日
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 米国の肝煎りで進んでいた環太平洋経済連携協定(TPP)の成立が、にわかに怪しくなった。米国議会下院は16日に予定していた関連法案の採決を7月末まで延期することを決めた。背景には評決を急いでも成立は無理、という推進派の判断がある。大詰めに来てエンジンブレーキが掛かった。オバマ大統領の足元から反対の火の手が上がったからだ。

 TPPは国家の主権を侵す。強者に都合のいいルール作りが弱者を追い詰める。格差を拡大する。TPPを厄介者と見る議員が増えている。有力大統領候補ヒラリー・クリントン上院議員でさえ「慎重論」を唱え始めた。

 秘密交渉のベールの陰で資金力のある多国籍企業に都合にいい国際ルールを決めるのは、国民のためにならない、という正気に戻った議論が米国で渦巻いている。

 日本ではTPPは農業問題のように取り上げられ、「攻める米国・守る日本」という構図で描かれてきた。攻めるのがアメリカなら、議会が「TPP撤退」で大揺れする現状をどう説明するのか。

 日本のメディアは「混乱」と伝え、オバマ政権は求心力を失っている、と他人事のように描いている。交渉への影響を懸念するばかりで、なぜTPPがこれほど紛糾するか、根源を問い直す記事が少ない。

 「弱者へのしわ寄せ」は彼の国でさえ問題になっているのに、アメリカに譲歩を迫られるばかりの日本はどうなのか。国会議員は、せめて米国議会並みの真剣さでTPPを議論してはどうか。

推進なのか反対なのか
ヒラリーの本心はどこに

 ヒラリー・クリントンの「慎重論」だが、彼女はTPPに反対する民主党と推進派の共和党の双方から「賛否を明らかに」と迫らていた。国務長官だった2012年11月、「自由で透明で公正な貿易への道を開き、法の支配と公正な競争環境を実現する貿易協定のお手本」とTPPを持ち上げていた。ところがこのほど出版した著書「ハード・チョイセズ」にはこう書かれている。

 「大企業の利益を抑える法律や規制を制定した国家を訴える権限を(投資家に)与えるTPPに反対だ」

 どちらが本心なのか。そして6月14日、ヒラリーは集会で語った。「TPP反対」とは言わず、否定的な意味合いを込め、こんな発言をした。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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