岐路に立たされる日産自動車
ゴーン体制は今も盤石か?
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拝啓 カルロス・ゴーン・日産自動車社長様
貴兄がルノーと日産が資本提携した1999年6月、当時のシュバイツアー・ルノー会長の意を受けて日産COO(最高執行責任者)に赴任して以来、今回の株主総会で16年が経過しました。
1990年代末に2兆円もの有利子負債を抱えて瀕死の状態だった日産を再生させた立役者として、その経営手腕は誰しも認めるところでありました。確かに、ルノー・日産連合は今や世界第4位の販売台数を占めるに至り、20世紀末から21世紀初頭の世界自動車大再編の中で成功したアライアンス(提携)の事例であることは、言うまでもありません。
しかし、貴兄が日産社長と共にルノー会長を兼ね、両社のトップとしてルノー・日産連合を統括する立場を続ける中で、ルノーの経営を日産が助ける状態、つまりルノーの連結業績に日産の業績が大きく寄与していることでルノーが成り立つという逆転現象が続いている実態を、どうお考えですか。
また仏政府が、「かつてのルノー公団の再来か」と思えるほどルノーへの議決権を高める動きを、どう受け止めているのですか。仏政府と貴兄の間で齟齬をきたすことはないのですか。
日産としては、米国や中国における台数と収益率の高さでグローバル経営を進めていますが、日本市場では苦戦しています。今期も日本市場での新車計画がありません。日産の母国市場固めと生産体制を、どうするのですか。
日産再生のキーマンとして日本に赴任してから16年が経過しましたが、そろそろ日産トップを日産プロパーに任せませんか。それとも、「日産なくしてルノーは成り立たないから、まだまだ当分ルノーと日産の両トップを続ける」というお考えですか。あるいは、そろそろ転進されるお考えもあるのでしょうか。
敬具
上場各社の株主総会が佳境を迎えるなかで、日産自動車の株主総会が6月23日、横浜のパシフィコ横浜・国立横浜国際会議場で開催される。
この日産の株主総会でどのような質問が出るか、株主の関心が高そうな事項について、筆者が株主各位の代わりに、ゴーン社長の胸中を探るための率直な意見として手紙風にしたためたのが、前述の文面である。
筆者は、今日産自動車は岐路に立たされていると思う。今回は、これまでのゴーン体制の検証を軸にしながら、日産の「これから」に思いを馳せてみたい。