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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

ワークライフバランスへの違和感

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第32回】 2009年8月21日
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仕事時間の単純短縮は難しい

 批判を承知で敢えて議論をしてみたい。近年盛り上がりを見せているワークライフバランスの議論に対して、どうしても違和感を覚える。

 そもそもワークライフバランスの定義はあいまいな状況ではあるが、仕事もライフスタイルも両方充実させよう、そのためには仕事一辺倒の生活は見直しましょう、というのが基本的な認識だと思われる。もう少し突っ込めば、仕事量をそこそこに抑えて、あるいは仕事を超効率的にこなすことで、アフターファイブなりアフターシックスなりの時間をライフスタイル充実の時間に充てようということだと思われる。

 ビジネスの現場にはありとあらゆる無駄が存在するので、それらを排除することができれば労働時間の時短につながり、ライフスタイルも追求できるという議論は理論的には理解できる。また、育児や子育てのためには、社員が定時に仕事を終えて帰宅できる環境の整備が重要なのも理解できる(我が家も子育て家庭である)。

 しかし、仕事をしていて思うのは、働き盛りの20代~40代に関しては、いかに効率的に仕事をしようが正規労働時間だけで仕事をこなすのは無理がある。もし、ワークライフバランスの定義が上にあげた通りであれば、その追求はビジネスキャリアからの離脱を意味しかねない。

議論されるべきは
労働時間帯と労働場所の裁量制

 子育て家庭の場合、21時に子供が就寝してしまえば、そこからはフリータイムである。そこで夜の2時間を労働に充てることができれば、実質労働時間は2時間増える。あるいは、子供と一緒に親も21時に寝る場合、3時に起きれば睡眠時間は6時間確保でき、3時から6時まで働くと3時間の労働時間となる。そういう家庭での労働時間を会社での労働時間に加算するような仕組み、それこそがワークライフバランスではないかと思う。

 これは世の中で広く議論されている在宅勤務とは異なる。在宅勤務は、通常のオフィスアワーの仕事を会社ではなく家ですることを意味することが多いが、ここで議論をしようとしているのは、基本的には昼間の仕事は通常どおり会社で行って、それ以上働く必要のある場合は家で育児に差し障りのない時間帯で行うことを意味している。

 メディアでは、在宅勤務の成功例がよく取り上げられるが、自営業を何年もした身分に言わせると在宅勤務ほど非効率的なものはない。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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