ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
小宮一慶の週末経営塾

「研修中」バッヂをつけた新人に接客させるのはなぜ問題か

小宮一慶
【第12回】 2015年7月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「研修中」は社内事情

 「お客さま第一」ということを経営者が指揮官先頭で行い、そして社内に声をからして叫んでいても、少し気を抜くと、内部の視点が優先してしまうものです。

 以前、「研修中」と書かれたワッペンをつけさせて新人に接客させているファミリーレストランを見たことがあります。それでは、お客さまも気を遣いますし、場合によっては、「新人なので許してほしい」というようにも受け取れるので、「なぜ、そんなことをしているのですか」と私が尋ねたところ、社員から返ってきた答えは、「新人なので、周りにいるスタッフがすぐにフォローできるようにするためです」というものでした。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 これは、単なる理屈です。新人をフォローするのが目的なら、お客さまには分からないように小さなリボンでもつけて目印にすればいいだけの話です。どうして、「社内の事情」をわざわざお客さまに知らせるのでしょうか。

 新人だとお客さまが分かることは、お客さまにも気を遣わせることになりかねません。新人だから料金を安くしてくれるのならまだしも、お客さまに迷惑をかけたり、気を遣わせるのは間違いです。

 そういう考えを「自社都合」と言います。自社都合や内部志向をお客さまに押しつけるような会社が、お客さまの立場に立てるはずがありません。

 こうした会社は、「内部志向」が強い会社、あるいは、「ES(従業員満足度)」を優先している会社と言い換えることができます。

 こんなこともありました。時々利用するある宿泊施設で、目覚まし時計のカチカチ音がうるさいので、時計を音のしないデジタルに換えたらどうかと担当者に申し入れたところ、翌年同じところに泊まったら、時計がなくなっていました。

 担当者にそのことを尋ねると「今は、皆さんが携帯を持っていますから」と言われました。面倒の種を消してしまったのです。お客さまからすれば、目覚まし時計があったほうが便利なのですが、内部のことだけを考えると、面倒の種をなくすという発想になってしまうのです。

 内部志向の会社は、お客さまの都合より、自分たちの都合を優先しがちです。経営者や従業員優先、そして、その状態がひどくなって、自分たちだけが金儲けができればそれで良いというような極端な内部志向になると、どんな手を使ってでも儲けようとして、不祥事を起こして塀の中に入る人まで出てしまいます。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

小宮一慶

京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス (現、セントケア)を経て独立し現職。名古屋大学客員教授(平成26年度後期)。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」を元に、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年100回以上講演を行う。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー21)など著書は100冊を超え、現在も経済紙等に連載を抱える。


小宮一慶の週末経営塾

経営課題を抱えて日々悩む経営者に向けて、数々の企業経営者に伴走してきた経営コンサルタントの小宮一慶氏が課題解決の「ヒント」を提供。どんな業種にも通じる経営の原理原則をおさえながら、経営者はどうあるべきか、実際の経営現場で何を実行すべきか、を語る。

「小宮一慶の週末経営塾」

⇒バックナンバー一覧