野村證券を擁する野村ホールディングスといえば、国内で圧倒的な基盤を持つ業界の雄だが、足元では「世界のノムラ」への脱皮を模索中。鍵を握るのは投資銀行部門だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
「あれは野村にしかできない。今後2匹目のドジョウを狙った証券会社が続々と出てくるはずだ」
外資系証券マンがそううなる“新商品”がある。トヨタ自動車が5000億円規模で新たに発行する、普通株とは配当などの権利が異なる「種類株」が、それだ。
日本では伊藤園などごく少数の企業しか手掛けてこなかった種類株。既存株主が不利になるなど株主の公平性を守る観点から発行が難しいとされてきた。それをトヨタと証券会社トップの野村ホールディングスが新境地を切り開いた格好となった。
これを成功させたのが野村の投資銀行(インベストメントバンク=IB)部門である。
そもそもIBとは、一般的に増資などに伴い企業の株式や債券の引き受けをしたり、企業買収(M&A)において助言したりして手数料を稼ぐビジネスだ。
その野村のIB部門が攻勢を強めている。トムソンロイターの調査によると、引き受け業務に関わる2014年度の案件金額シェアランキングでは、日本関連M&Aと日本関連株式の引き受けで二冠を獲得。シェアも伸ばし国内基盤をさらに強固なものにしている。
しかし、国内市場を見渡せば14年度のM&A関連の国内案件金額は約4兆円にとどまり、1998年度に次ぐ低水準だった。株式関連の調達金額も、市場環境が良かったにもかかわらず前年度比16%減少し、市場の飽和感が拭えない。
片や、日本企業による海外企業の買収は8兆円を超え過去最高金額を記録した。つまり、野村が今後成長するには、国内の顧客基盤を維持しつつ、グローバル化する日本企業と共に海外に打って出て、資金需要を捉えていくこと。さらには海外企業を顧客にしていくことだ。そこでIBのグローバル化が迫られている。
とはいえ野村はグローバル化に挑戦するたびに辛酸をなめてきた過去がある。象徴が08年の米リーマン・ブラザーズの部門継承だ。