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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

ドイツのギリシャ切り捨てを許さない巨額貸付の重荷

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第21回】 2015年7月16日
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フランクフルトのユーロタワーとユーロのシンボル。ギリシャの救済はドイツにとって負担のはずだが…

 ギリシャに対する支援について、ようやく合意がなされた。支援の継続は、ドイツなどにとっては重い負担だ。それにもかかわらず、なぜギリシャを見放さなかったのか?

 それは、「ターゲット2」と呼ばれる決済制度を通じて、すでにドイツがギリシャに対する巨額の貸付を(それとは明確に意識することなく)行なってしまったからだ。ギリシャがユーロを離脱すれば、この債権は回収できない。だから、ドイツは「いまさら後には引けない」状態に陥っているのである。

ギリシャを見放すことが
できない政治的理由

 以下では、ユーロ問題をギリシャ以外のユーロ参加国、とくに、ドイツ、オランダなどの支援国の立場から考えてみよう。

 ギリシャ議会は財政再建策を承認したが、実際にそのとおりのことが実行される保証はない。これまでの経緯を顧みると、実行されない可能性のほうが強い。だから、これでユーロの問題が解決されたわけではない。これは時間稼ぎにすぎない。

 ギリシャに対する追加支援を行なったり、債務削減を行なったとしても、問題の基本は解決されない。ギリシャ問題は、今後もくすぶり続けるだろう。

 支援を継続するのは、支援国にとって重荷だ。バルト3国などでは、生活水準がギリシャより低いのに、なぜギリシャを支援しなければならないのか、という国民感情も高まっている。

 それなら、いっそのこと、ギリシャをユーロから離脱させてしまったらどうなのだろう? もちろん、それによって国際金融システムは大きく混乱するだろう。しかし、それは一時的なものだ。

 ギリシャは経済的には小国であって、ユーロ圏のごく一部にすぎない。ドイツなどの支援国から見れば小さな存在であり、そのユーロ離脱が経済活動に大きな打撃になるとは思えない。

 かつてはギリシャ国債を民間の金融機関が保有しているという問題があった。しかし、いまでは残高も少ない。ギリシャの債務の多くは、欧州金融安定化基金(EFSF)、欧州中央銀行(ECB)、欧州投資銀行(EIB)が保有しているため、民間保有比率は低い。

 それにもかかわらずドイツなどがギリシャを支援し続けるのは、なぜなのだろうか?

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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