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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国は安保法案の“強行的通過”をどう見ているか?

加藤嘉一
【第56回】 2015年7月21日
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信念に従って突き進む安倍首相
中国は安保法案採決をどう見ているか

安保法案が衆院で強行採決された。中国の政府関係者や識者たちは、このことに対してどんな本音を持っているのだろうか

 7月16日、異例の国会延長で約116時間審議された安全保障関連法案が、自民、公明両党の賛成多数で可決され、衆議院を通過した。これから同法案が参議院に送付される見込みであるが、採決を退席あるいは欠席した野党による反発や、同法案に反対する一部国民世論などにより、同法案を巡る国内の状況は荒れているようだ。

 説明責任の重要性を随所で強調してきた安倍晋三首相は、内閣支持率へのネガティブな影響を懸念しつつも、反対勢力が何を言おうが、国民の多くが不満を露わにしようが、自らの信念に従って突き進もうとしているように見える。

 そんな一連の動向を、お隣の中国はどう見ているのだろうか。本稿ではこのテーマを扱いたい。

 本連載の核心的テーマである中国民主化研究とは直接的関係性は見出せないが、過去のコラム(【全3回短期集中考察:“民主化”と“反日”の関係(3)】中国の民主化を促すために日本が持つべき3つの視座)で扱ったように、中国の政治体制や国内市場、大衆世論などが日本、特に中国社会の底流に存在し続ける“反日”という潜在的ファクターとどう向き合い、付き合っていくかという問題は、中国共産党一党支配という政治体制がどこまで持続するのか、健全な政治改革が行われ得るのか、といった難題を解明する上でも重要だと私には思われる。

 結論から入る。

 日本の安保関連法案を巡る動向に密接に注目し、報道するメディアは不満を露わにし、歴史認識問題とリンクさせて日本に圧力をかけようとしている。知識人もそんな世論形成に加担している。一方で、政府の立場は世論に比べて抑制的であり、特に共産党指導部は安倍政権が目指す方向性や内実を警戒しつつも、戦後70年という時期において、日本との関係を発展させようとしている。

 具体的に見ていこう。

 まず、中国世論における対日圧力の形成は大きく分けて、国内の専門家のコメントを引用しつつ展開する国内的立場の主張と、外国メディアの報道や外国人専門家のコメントを引用する形で、国際世論を引き連れて日本に圧力をかけるという、2つのアプローチがあるように見受けられる。

 「今週、日本の衆議院は主流民意と第二次世界大戦期間中に日本軍の野蛮な侵略に遭った国家の感情や抵抗を顧みず、集団的自衛権を解禁する安全保障関連法案を強行的に通過させた。そのやり方は、残酷な歴史の教訓を無視し、公然と平和憲法を破壊し、日本が“主動的戦争”をするのに“法制的保障”を与えるものであり、アジア太平洋地域、乃至は世界の安全に不安定要素を注入した」(国営新華社通信/評論記事『日本が安保関連法案を強行的に通過させたことは戦争を‘抱擁’することである』/7月17日)

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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