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毎月分配型投信「第4世代」のひどすぎる手口

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第386回】 2015年7月22日
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新たに開発された毎月分配型の手口
「グロソブ」が上品に見える…?

“人気の金融商品”と“良い金融商品”は一致しない

 「毎月分配型」と称される投資信託は、その名の通り毎月決算を行って分配金を支払う仕組みに特色がある。1997年に設定された国際投信投資顧問の通称「グロソブ」ことグローバル・ソブリン・オープンがこのジャンルの開拓者であり、同ファンドは、一時運用資産残高が5兆円を超える巨大ファンドになった。

 毎月分配という仕組みは、運用利回りがプラスであることを前提とするなら、課税のタイミングが早くなる分だけ、年1回分配の同一運用内容の商品よりも確実に損になる。

 しかし、特に年金収入の補完を意識する高齢者にとって、毎月収入があることの(実際には自分の資産を取り崩しているだけだが)分かりやすさと安心感、分配金を一定に保つことで「安定した利回り」に近いイメージを与えて安定した運用であるかのように見せる売り方が効果的であったことなどから、証券会社ばかりでなく、銀行の窓口販売でもよく売れて、「売れ筋商品」の地位を獲得した。

 銀行窓口での投信販売は、1998年に実施され「日本版ビッグバン」と呼ばれた一連の金融規制緩和の一つとして解禁されたが、グロソブおよび同類の毎月分配型ファンドは、リスク商品を売ることに慣れていなかった銀行員に分配金を強調して顧客に投信を売る手口を覚えさせ、彼らの投信を売ることに対する抵抗感を払拭していった。筆者は、投資家にとっての損得を重視して、一貫して毎月分配型ファンドに批判的なのだが、グロソブが結果的に果たした投信販売拡大への貢献、投信関連業界への貢献は認めなくもない。

 もちろん、証券マンもしばしば分配金を強調して投信をセールスする。

 ある日、筆者のオフィスに飛び込み営業でやってきた大手証券の若手証券マンは「社長、投資信託の選択にあって重要なのは、インカムゲインすなわち分配金です」と大きな声で断言することから、当時毎月の分配金が200円 (税引き前) ほどあった某商品のセールス口上を述べ始めたものだった。

 「でも、元本が値下がりすると、トータルでは損になるでしょ」と言うと、彼は「ええ。いえ、でもきっと大丈夫です。私は米国のリート(REIT:不動産投資信託)もブラジル・レアルもしばらくは大丈夫だと確信しています」と言って動じなかった。彼は、恐らく数字を稼ぐいいセールスマンに育っているだろう(彼の会社には「数字は人格である」という素敵な格言がある)。筆者には、彼の将来の方が、ブラジル・レアルの将来よりもよほど確かなものに思える。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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