東京都港区内の高輪区民センター。毎月第三金曜日に「みんなとオレンジカフェ」が開かれる。オレンジ色の幟を入口に立てた部屋には、臨床心理士や看護師、保健師などのスタッフ6人が待ち受けている。

 そこへ、認知症の本人や妻に連れ添われてきた認知症の高齢者など5人がやってきた。参加費200円を支払って、テーブルごとに分かれて座る。それぞれにスタッフが横に並び、参加者の話を聞く。アロマセラピストの資格を持つボランティアの女性が、参加者の手を取ってハンドケアをしながら、思い出話に耳を傾ける。

 認知症ではないかと気がかりな80歳代の女性は、近くに住む娘に勧められて毎月必ず顔を出すという。同じテーブルで終始笑顔で話しかけてくる女性は、画像検査で認知症の判定を受けた。

「自宅では一人なので、話し相手がいない。ここでは皆さんとおしゃべりができるので楽しい」と、二人が話す。15時過ぎからは、医師を招いて「認知症と食事について考える」というテーマの話を聞く。家族が同行できるバスツアーや音楽交流会も開いている。

 港区がこのカフェを開設し、運営するのは委託を受けたNPO法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」。アラジンは、介護者たちのケアを活動目的にした法人である。

「みんなとオレンジカフェ」は、「港区在住の65歳以上の認知症の方やその家族、認知症予防に関心のある方のためのカフェ」ということだ。港区は区内を5地域分け、この高輪地区のほかに芝と荒川地区でやはりアラジンが月一回運営している。麻布と芝浦港南地区では、NPO法人「エブリィ」が、同じように同区からの委託事業として開催している。

 こうして区内の全地域の住民を対象に認知症カフェを開設しているのは、全国の市区町村の中でも珍しい。同区の意欲がうかがえる。

認知症ケアに必要なのは
「積極的に人と関わり合う場」

 多くの認知症カフェは月2、3回の開催にとどまっているが、東京都八王子市の「八王子ケアラーズカフェ わたぼうし」は、火曜から土曜日まで毎日開いている。

 JR八王子駅に近いビルの2階。2人のスタッフのほかに、ケアマネジャーが家族の話に耳を傾ける。認知症の本人もその傍らで、お茶を飲みながら過ごす。専門的な相談事には、東京都の「認知症コーディネーター」の資格を持つ看護師が対応する。このほか11人の有償ボランティアが運営に参加。その多数は現役の介護者や介護経験者で、家族の悩みに共感しながら話を聞く。

 その中に、若年性アルツハイマーと診断されて3年経つ男性(64歳)もいる。週一回このカフェに通っており、利用者たちの写真を撮ってプレゼントしている。認知症本人としては有効な社会参加であり、特技を生かしたボランティア活動でもある。認知症への対応としてはお手本のような試みと言えるだろう。話し相手がいない孤立感が認知症の症状を進めがちになる。こうした積極的な人とのかかわりができる場を作るのは認知症ケアには最適例だ。

 このカフェを運営するのは一般社団法人「八王子福祉会」。八王子市内の9つの社会福祉法人が集まって2011年に設立した。同じビルの4階で「八王子地域包括支援センター子安」を運営しており、同市の認知症家族サロン事業に応募して、この2月に「わたぼうし」を開いた。

 カフェは誰でも利用できる。お茶やお菓子を提供しており、運営協力費として200円を払いたい利用者は払うという仕組みだ。