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医療・介護 大転換

国交省の理想的な介護住宅プランに
厚労省がつけた「難癖」の深刻度

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第31回】 2015年5月27日
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「自宅で暮らし続けたい」を叶える
「サ高住」の登場

Photo:beeboys-Fotolia.com

 高齢者の多くは、どんなに心身が不自由になっても「自宅で暮らし続けたい」と望んでいる。そのためには、24時間切れ目のないない医療や介護サービスが必要だろう。医師や看護師が来てくれる在宅診療と24時間訪問などの在宅介護が欠かせない。だが、まだ普及が遅れており、全国どの地域でも、と言える状況からはほど遠い。

 そのため、ほとんどの高齢者は、介護や医療サービスを求めて施設や病院への入所を迫られるのが現実である。

 その引っ越し先は、自宅にできるだけ近い環境、雰囲気であることが一番である。つまり、他人との共用部はできるだけ少なく、プライバシーがきちんと確保されねばならない。共用のトイレで暮らし続けるのは人間の尊厳を無視した考え方だろう。

 これまでの4人部屋の特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)は問題外。といっても、そもそも特養には50万人以上の待機者がいて、なかなか入居できない。有料老人ホームは毎月の利用料が特養の2倍近くの高額であり、認知症専門のグループホームは絶対数が少なくて、特養並みに入居が難しい。

 そこへ、普通の暮らしに近い集合住宅がやっと3年半前から制度化された。「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」である。国土交通省管轄の高齢者居住安定法によって、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)を進化させ、多額の建設補助金を投入して普及に力が入っている。現在、18万室近くまで広がった。

 何しろ、居室面積の最低基準が18m2。トイレと洗面台、収納設備が必ず備わっていて、ワンルームマンション並みの水準である。特養や有料老人ホームの最低基準面積は13m2台。グループホームは僅か7m2台に過ぎなかった。

 国交省は税を投入する公的住宅の基準を25m2以上とし、これが日本人が暮らす最低居室面積となっていた。ただ、サ高住は高齢者に絞った集合住宅なので、調理や入浴を一人でできなくなる場合も十分考えられ、キッチン、食堂、風呂を共用の代替設備でまかなえられれば特別に18m2まで下げた。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

「医療・介護 大転換」

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