「お世話をする・される」
ではない関係

「Dカフェ・ラミヨ」。名前の意味は“誰でも・仲間”

 自宅を開放した認知症カフェもある。東京都目黒区の祐天寺駅近くの閑静な住宅地。竹内弘道さん宅の2階が認知症カフェ「Dカフェ・ラミヨ」だ。Dとは、Dementia(認知症)、District(地域)、そして「だれでも」の意味を込めている。ラミヨは、Lami+イヨ。amiはフランス語で「仲間」。イヨは、竹内さんが12年間自宅で介護を続けてきた母親の伊代さんの名前である。4年前に伊代さんは自宅で亡くなった。安らかな自然死だったという。

 伊代さんの死亡後に、竹内さんは自宅を大改築して「市民交流スペース・ラミヨ」の表札を掲げた。第2日曜と第4土曜の月2回、2階のフロア全体を使って様々な催しが開かれている。

「認知症をキーワードに、みんなでコーヒーを飲みながらコミュニティの話をしましょう」と言うのが竹内さんの思いである。認知症家族の介護者をはじめ、医師やケアマネジャー、介護福祉士、一般市民などが集まる。

 竹内さんが強調するのは、カフェでの過ごし方。「お世話をする・される」という上下関係ではなく、水平で対等(ピア)な関係で過ごす。参加者が等しく300円の参加費を支払って、自律的に動く。「自由・平等・博愛のデモクラシーの考え方です」と竹内さん。医者や患者という肩書のない集いを目指す。

 竹内さんは、自宅で母親を介護しながら1998年から任意団体の目黒認知症家族会「たけのこ」を主宰。認知症本人と家族、支援者が一緒に過ごす取り組みを続けてきた。本人の心の声に耳を傾け、介護者の悩みに一緒に向き合おうという活動だ。目黒区と目黒区社協の「めぐろボランティア・区民活動センター」との協働事業で、同区から保健師の派遣、社協から助成を受けている。

「Dカフェ・リハビリ工房」

 こうした活動の延長線上に自宅カフェを開いた。自宅だけではなく、区内の各地から同様のカフェ開設の要望が来るようになり、デイサービスの休日活用に乗り出した。これがDカフェの2号店、3号店となる。14年7月に西小山で「Dカフェ・ニコス」を、15年2月には八雲で「Dカフェ・リハビリ工房」をそれぞれ開設した。

 さらに病院内認知症カフェという画期的な試みが実現する。国立病院機構・東京医療センター内にこの5月、「Dカフェ・東が丘」が出来た。今年度中には、病院内型とデイサービス型をまたひとつずつ作る計画も進んでいる。来年度のプランも合わせると、全部で8カ所のDカフェが誕生するという。竹内さんは、今や認知症カフェの総合プロデューサーと言ってもいいだろう。

 こうした東京都内の認知症カフェはいずれも東京都の「認知症の人と家族を支える医療機関連携型介護支援事業」によるものである。この助成事業は、1区市町村につき上限1000万円を投入して、認知症カフェの開設を後押しするもの。医療機関の専門職との連携が事業の条件となる。東京都が区市町村に補助を行い、区市町村が直営またはNPO法人などに委託して運営する。事業期間は3年。

 2014年度までに港、墨田、板橋、目黒、豊島の5区と八王子市が名乗りを上げ。合計12ヵ所でカフェが開設されている。区市はカフェにそれぞれの区市名を被せてはいるが、費用はすべて東京都が拠出している。実質的には、他府県にはない東京都独自の先駆的事業と言っていいだろう。