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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ポルトガル民話「ストーンスープ」の教えが、
日本の職場で役に立つ理由

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第15回】 2015年8月3日
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イノベーションには信頼関係に基づく
“チーム”が不可欠

 これまでにも繰り返し述べてきましたが、日本企業がクリエイティビティを発揮し、再び世界をリードしていくのはそれほど難しいことではありません。これから公共投資や教育にお金や時間をかけていかなければならない国から見れば、はるかに簡単なことといえるでしょう。

 では今、日本企業にどんな取り組みが必要かというと、私は次の3つに集約されると考えています。

1.深いコミュニケーションに基づくチームづくり
2.部下に権限と責任を持たせる
3.社員に公正・透明で十分なインセンティブを与える

 このなかで、2番と3番については以前にも取り上げてきました。今回は、最も難しく、取り組みが遅れている「深いコミュニケーションに基づくチームづくり」についてお話したいと思います。

 私がいうチームとは、「多様な人間が、ある目標を達成するために熱意を持って助け合う組織」のこと。イノベーションやアントレナーシップを生み出す土壌となる組織です。今の日本には、同質な人の集団であるグループはあるが、異質な才能が一つの目的の下に集まって構成されるチームがありません。ここが問題なのです。

 チームの本質は「お互いに助け合う」という関係にあるわけですが、そのためには何が必要かわかりますか。

 ちょっと意外に思えるかもしれませんが、それは信頼し合える関係になるために「お互いの“弱み”を知る」ことなのです。本音でお互いの弱点や失敗談を話すことによって、自然とチーム内に信頼感が生まれてきます。

自分の弱みを知らない人とは
一緒に働けない

 そこでキーマンとなるのが職場の上司です。率先して自分の弱みをさらけ出し、他のメンバーにも自分の弱点を話しやすい雰囲気をつくり出すコミュニケーション力が必要です。でも、日本の上司のほとんどは、プライドがじゃまして自分の弱みを部下に話すなんてことはしません。なめられたら困る、とでも思っているのでしょう。

 そうはいっても、上司だって人間。必ず弱点や欠点、短所があります。あのジャック・ウェルチもビル・ゲイツもそう。弱点は、あって当然なのです。米国の採用試験で「あなたの弱みは何ですか」と聞かれて、「ありません」と答えたら、即座に減点されます。だって、自分の弱みを知らなければ、それを直すことも補強することもできない。そんな人は信用できないから、チームで一緒に働きたくありません。

 チームが信頼関係に基づいていれば、会議で意見が激しく対立し、衝突(コンフリクト)が起きても後を引くことはないし、むしろ真剣に議論していれば、コンフリクトが生じるのは当たり前。その摩擦からイマジネーションが生まれ、画期的なアイデアが出てくるのです。

 また、情報を共有せず、抱え込むクセもいただけません。言うまでもなく、ICT時代のインタラクティブの恩恵を十分に活用しなければ、タイムロスを招いたり取り残されたりするのは必然だからです。

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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

ご意見は、ツイッター@whsaitoまで。

 


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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