ああ、産みたいのに産めない!
「2人目不妊」が蔓延する子育て家庭の混沌ジャーナリスト・小林美希

2015年8月5日公開(2015年8月5日更新)
小林美希[ジャーナリスト]

 その甲斐あって4月に認可保育所に入園できたが、そこは新しくできたばかりの株式会社が運営する保育所で、筆者が以前の記事で紹介したような「ブラック保育所」だった。保育士たちは皆20代前半で若い。自由に動き回る1歳の子どもたちを手荒に抱き上げて、「あっちに行って並んでよ」と放り投げるため、子どもたちがすっ飛んで壁に激突する姿を見てしまった。川田さんは、保育の質すら問えない状態に疑問を感じ、子どもを預けながら心休まる日がない。2人目どころの気分ではなくなった。

 そのうち友人が次々と2人目、3人目を妊娠・出産し始めた。「夫は10歳年上。私も産むなら急がなければと思うけれど、“保活”が大変な上に子どもを劣悪な環境に置いてまで働くとなると、産むことに対して気が咎める」と、深いため息が止まらない。

 保育業界では、「良い保育所に入ると、親が保育士や他の保護者、園児たちと一緒に子どもがいることの楽しさを感じ、2人目、3人目を産んで、きょうだいが多くなる家庭が増える」とも言われているが、待機児童の多さでそもそも保育所に入れない、入ることができても保育の質を問えないという状況で、保育所問題による「2人目不妊」に悩むケースも目立っているのではないだろうか。

人口減少日本にじわじわ効いてくる
「2人目不妊」のボディブロー

 国にとって理想の子どもの数が生まれてくるためには、親の雇用・収入の安定、長時間労働をなくすことはもちろん、保育所の安定した運営がなされていることが必要とされている。しかし、現状は到底そうなっていない。

 女性の「不妊」が社会問題となって久しい。それは何かと人口減少議論などに結び付けられ、「産めない」女性たちに焦りを与えている。その一方で、「産めるのに産めない」女性たちも増えているという現実がある。ここに、「産ませない社会」の現実が見える。本来なら子どもを産めるにもかかわらず、社会的な制約などによってそれが叶わない状況を「機会損失」と表現するのには、いささか語弊があるかもしれない。とはいえ、1人でも子どもの数を増やしたい今の日本において、そうした状況はあまりにも「歯がゆい」と言えないだろうか。

 厚生労働省の最新の「21世紀成年者縦断調査」が7月15日に発表された。2012年調査の時点で結婚していた者の「希望子ども数」は、2人と3人がそれぞれ5割弱という結果となった。「夫の休日の家事・育児時間」についても調べており、子ども1人の夫婦で夫の家事・育児時間「なし」の場合は、第2子が生まれる割合は33.3%にとどまる。第3子はわずか4.1%だ。一方、夫の家事時間が多くなるにつれ、第2子、第3子が生まれる率は高まっており、第2子出生については、2時間未満で55.6%だが6時間以上では89.3%という開きが出ている。

 「1人目不妊」と比べて世間の危機感が薄く、今はまだ大きな議論が起きていない「2人目不妊」だが、人口減少に悩む日本にとって、そのダメージはボディブローのようにじわじわと効いてくるのではないかと、筆者は危惧している。政治や行政は一刻も早くことの重大さに気づき、対策を練るべきだろう。

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